柔らかな日差しが眠気を誘う昼下がりは過去の私にとって数少ない穏やかだと思える時間だった。ベランダの窓によりかかって空を眺めると少しだけ心が軽くなる。そしてこのまま、穏やかだと思えるまま時間が止まってしまえばいいと願った。けれど風に流される雲は時間の経過を具現化しているようで焦燥感を感じることもあったし、ふとこの先の事を考えるとずしりと身体が重くなりうまく動けなくなったりもした。しかしやはり私にとってあの時間は心が落ち着くものだった。





「風邪をひくぞ」



窓際でうとうととしていたらしい。華鬼に声を掛けられて慌てて壁にかかっている時計を見ると30分ほど船を漕いでいたようだ。目線を手元に下げると洗濯物を畳んでいた最中だったようで膝には畳み掛けのタオルが乗っている。覚醒しきれない、ずしりと重くなった頭を後ろに傾けると少しだけ眉をしかめた華鬼の姿があった。

「あ、暖かいからつい」
「今は大事な時期だろ」
「このくらい大丈夫」

膨らんだ腹部に手を添えて華鬼に答えると眉に刻まれた皺が更に深くなる。それを無視して洗濯物をたたむ作業を再開しようとしたら華鬼に睨まれてしまった。これ以上彼の機嫌が悪くなってしまうとなかなか直らなくなるので私は慌てて窓際から離れリビングルームにある一番大きなソファに移動した。それを見た華鬼は大きな溜め息を一つし、膝かけを持ってきてくれた。ありがとう、お礼を言うとようやく眉間に刻まれた皺が解消され気付かれないようほっと胸を撫で下ろした。


「あっ」
「どうした」
「いまお腹蹴った」


腹部を撫でてみるとトントンと振動が伝わってくる。撫でていた手を止め華鬼にそう伝えると彼は顔を緩め手を腹部へ伸ばしてきた。

「元気だな」
「うん」

早く会いたいね、そう華鬼に言うと今ではよく見せるようになった私が一番好きな表情を浮かべた。





今でも昼下がりは私にとって穏やかだと感じる時間は変わらないけれど、この先に続く未来が明るく温かいものだと分かるから昔と違い笑顔で時間の経過を受け止めることができる。待ち遠しいとすら思う。私はとても幸せなんだと実感できる。


目が合った二人は幸せそうに笑いあった。


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