さて、そんなこんなでデュエルをはじめた僕。
あの時、ウジャト眼に触れて感じた鼓動の意味はまだ分からないけれど、あまり深く考え込まないようにしている。だってフラグの予感しかしない。いやホントに。
別にさ、物語に巻き込まれるのが嫌なわけじゃないよ?可愛い片割れの遊戯は勿論大好きだし、そのうち彼に宿る所謂『闇遊戯』だって大好きだ。
でもさ、考えてみ?何故にカードゲームで命かけなきゃならん。何故に娯楽で命かけなきゃいかん。闇のゲームとか厨二乙wとか言ってらんねーからマジで。そんな危険なもんに遊戯を放り込むとか、僕発狂しないでいられるだろうか。え?ええ、お察しのとおり僕ブラコンですけど何か問題でも?←

まあ、僕がどれだけ遊戯を危険から遠ざけたいと思っても、命賭ける様な真似はしてほしくないと思っていても、宿命は否応なしに遊戯を巻き込んで廻るのだろう。…早い話、今からでもあの黄金櫃を…千年パズルを遊戯から遠ざけてしまえば話は簡単なんだろう。
でも、そんなことをしてしまえば、遊戯に待っている未来は僕が知るものと大きく形を変える。その先に待つのは、おそらく闇。
千年パズルがなければ、きっと遊戯が変わるきっかけもなくなるし、成長することも無いのだろう。
僕が知る『遊戯』は、あの千年パズルを巡る闘いの中で成長していった。何物にも変えがたい、大切な宝物を得た。



「『見えるんだけど見えないもの』―――か」



僕は床に散らばったカードから視線を上げ、窓辺に置かれた黄金櫃を見上げる。
そっとその場から立ち上がり、黄金櫃に手を触れた。………あれから、僕は『彼』の名を呼んでいない。
恐らくこの世界で唯一、僕だけが知っている『彼』の真名。

きっとこれ以降、然るべきその時まで、僕が『彼』の名前を呼ぶことは無いのだろう。
世界がゆがんでしまうから。物語がゆがんでしまうから。

…けど本当は、そんなのただの建前なのかもしれない。きっと僕は、怖いだけなんだろうな。



「…はは、まあ悩んでもしょうがないか」



自嘲の笑みをこぼし、僕は黄金櫃を撫でる。



「待ってるよ、『名もなきファラオ』。君に逢えるその日を、僕も」








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -