じりじりと強烈な太陽が熱く熱せられた黒いアスファルトに影を焼き付ける。
季節は夏。しかも夏休み真っ只中の一年で一番暑い季節だ。くっそ鬱陶しい。



「おーす神那、こんな真夏日だってーのに相変わらず涼しい顔してるね!」

「ふざけんな十分暑いよ滅べ夏」

「…その顔だと暑そうに見えないのよ、この鉄仮面が」



ぽん、と笑顔と共に私の肩を叩いた友人の言葉に間髪入れずに返答する。
そんなこといわれましても。この顔は元からだい。



「はーあ!こんなクソ暑い日に登校日なんてやってられないわよ!ねえ神那、アンタちゃんと今日提出の課題やってきた?」

「やったよ、昨日徹夜で」

「……アンタまたアニメ見てたんでしょ。課題は計画的にやれとアレだけ言ったでしょーが!」

「アニメの何が悪い!あいつらの顔芸とイケメンスキルマジ半端ねぇんだからな!王様なめんな!!」

「しかもDMかよ懐かしい!!」



よくわかったな。彼女の突っ込みにそう返せば、私だって小さい頃見てたものと呆れたような声が返ってきた。
いや、だとしてもあの少ないヒントだけで遊戯王だと断定できたのは賞賛に値するぞ友よ。



「確かに王様のイケメンスキルは半端なかったわね……今でも微妙に覚えてるわ。何やってもかっこいいとか反則でしょ」

「あーあ、あんな男三次元にいないかなぁ。あの人いろんな意味でイケメンすぎるだろ。是非お友達になりたい。遊戯たちも込みで」

「そこで“お友達”ってのがアンタらしいわねー。恋人とかじゃなくって」

「恋人とかじゃないけど…取り敢えず王様は俺の嫁(キリッ」

「すでに娶っていた…だと…!」



いやまず“嫁”に突っ込め。
ノリのいい友人に心の中で突っ込みを入れながら、私は鞄を肩にかけなおす。



「…恋人ねー。まあ、二次元のキャラを嫁婿にすんのはいいとして…なんか“恋人”って表記が生々しい気がしない?」

「え、そう?」

「少なくとも私には無縁」

「命短シ恋セヨ乙女ええええええええええ!!!」



え、そこまで言う?
私の発言にカッと目を見開き盛大なツッコミを入れてきた友人に若干引く。
や、でも今の時代私みたいな子って別に珍しく無くない?三次元より二次元派。いや別に私は本気で恋してるわけではないけども。



「…はあ……私はアンタの将来が心配だわ。ああ神様、私は友人の子供の顔を拝めるのでしょうか。願わくば私が死ぬ前にはこの無造作女の旦那と子供の顔を見せてください」

「人の事言う前に自分の男捕まえろよな」

「余計なお世話じゃ!!」



スパァンと頭を叩かれた。いてぇ。



「あーあほらっ!あんたと話してたらもう時間やばいじゃない!急ぐわよ!遅刻しちゃう!」

「私だけのせいかよふざけんな!ったく、早く行くよ!」



ふと携帯を確認すれば、時間はいつの間にかチャイムが鳴る5分前。私は友人の手を引いて、照りつける太陽の下を思いっきり走った。

これが、今までの私の日常。














「おはよー」

「うわ、焼けたねぇ!」

「久し振り!元気してた?」

「ねぇ、今日カラオケ行かない?」



ギリギリで教室に滑り込めば、久しく見たクラスメイト達が和気あいあいとしていた。皆最後に見たときより若干焼けている。ううん、健康的な肌の色だこと。



「あっ、神那ちゃんおっはよー!」

「おーす、元気してた?」



仲の良いクラスメイトたちと言葉を交わしながら、私は自分の席に鞄を置く。…その時、だった。



くらり、



「……うん?」



一瞬、目眩を感じた。
気のせいかとも思ったが、何だか少し目がチカチカする。



「…? 神那、どうしたの?」

「や、今ちょっと目眩が…」

「ええ?ちょっと、大丈夫?」

「んー…まぁ、平気かと」



眉間にシワを寄せ、片手で目を覆う。
何だ?暑さにでもやられたか?

友人たちは心配そうにこちらを見ていたが、丁度いいタイミングで教室に入ってきた担任の一声で、ばらばらと各々の席に散らばっていった。

それから暫く、提出物を集めたり、先生のこの夏の失恋話を聞いてそこそこクラスは盛り上がっていたが、その間にも私の目眩は酷くなるばかり。
ゔー…ヤバいかもしれない、これ。



「せんせー、ちょっと保健室行ってきていいですか」

「ぐす…なんだ継結、そんなに俺の失恋話は聞くに耐えなかったか?」

「全然関係ないですね。じゃなくて、目眩が酷くて気持ち悪いんで保健室行かせてください。私の体がベッドを求めてます」

「なに?そーいやなんか顔色悪いな、皆が健康的な小麦色の肌してる中でやけに白いなと思ったらそれが原因か!」

「や、それ単に私が休み中ヒッキーしてただけなんでそれこそ全然関係ないです」



てか、いい加減行っても良いですか。
片手でこめかみを押さえながら言うと、担任は一つ頷き「行ってこい」と言ってくれた。



「神那、私着いていこうか?」

「や、歩けないほどじゃないから大丈夫。行ってくるわ」



心配して立ち上がった友人にそう告げ、私はふらふらと教室を出て保健室に向かった。










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