今日もこの世界に朝日が昇る。宮殿の東に広がる砂の丘の向こうから覗く真っ赤な光を見つめながら、私は小さく溜め息をついた。

――――古代エジプト。

日本から一度も出たことがなく、現代のエジプトにすら訪れたことのない私にとって、それは未知の領域だった。

一応、遊戯王が好きだったこともあって、一時期エジプトの歴史や文化について調べ漁ったこともあったから、ある程度のことは知っている。


知っていた、けども………。



「現地に来ないと実際わかんないことって、あるよねぇ…!」



例えば、この暑さとか。
私は宛がわれた部屋の寝台の上に、ぐったりとうつ伏せで倒れていた。
なんだこの尋常じゃない暑さ。日本みたいな湿気を含んだジメッとした暑さじゃなく、ただ純粋に暑い。ジリジリと照りつける太陽の力だけで生まれた暑さに、現代っ子の私は早くも白旗だった。
しかも私の日焼けは、強い太陽の光に当たると、肌が黒くなるのではなく火傷をしたように赤くなって痛む方なので、迂闊に外を出歩けやしない。



「(…まぁ、今の状況じゃ……外に出るなんて選択肢すら存在してないわけなんだけど)」



ちら、と私は寝台に転がったまま視線を横に向けた。
………部屋の入り口、両脇に兵士と思われる男の人が二人。言うまでも無い、見張りだ。

突然現れた身元不明の異国人。
いくら王が連れてきたとはいえ、そうそう信頼できるものでも無いよなぁ。そのとき、ファラオと共にいた二人の様子を思い出す。……うん。疑いオーラ、隠してもいなかったな。
まあ、そりゃそうだ。ここの生まれではないから肌の色も違うし、顔立ちだって違う。着ている服の構造も、持っていたものだって彼らには未知のものばかりだっただろう。だって時代が違いすぎるし。

それでもまあ、こうして居場所をくれているだけ、扱いは大分良いのだと思う。
寝台脇の台の上に盛られた果物を眺めて、上半身を起こす。
………それにしても、ここは本当に古代エジプトなんだ。教科書や参考書だけでは想像の粋を越えなかった全てのものが、今目の前にある。…すごい、なんつーか、部屋の中がめちゃ色鮮やかだ。何がって、壁とか柱とか。すごく綺麗に彩られてる。

…ただ、めちゃくちゃ熱いけどな!

部屋の隅においてあった小さな壷の傍まで行き、中に入っていた水を少し掬って首元に当てる。…気休めにしかならないけど、しないよりは気分が楽だ。
でも、砂漠では水は貴重だし……やばいな、私ここで生きていけるだろうか。

















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