∴ 01 うわあ。 そう思ったけど、口に出さなかった私えらい。 一歩足を踏み入れた瞬間、コウタの元にバックホームしたくなったけど耐えた。ん?この場合バックコウタ?まあいいか。 「ほう、本当に10歳の女の子だったのか」 私を見た彼の第一声は、それだった。オイコラ。 「予想よりも426秒も早い。よく来たね、新型くん。…いや、新型のお嬢さんといった方がいいのかな?」 「どっちでもいいです」 本当にどうでも良かったので思わず即答すると、目の前の博士の顔が一瞬虚を衝かれたような表情になった。 しかしすぐ、あの独特の笑顔に戻る。 「はじめまして、私の名はペイラー・サカキ。アラガミ技術開発の統括責任者だ。以後、君とはよく顔を合わせることになると思うけど、よろしく頼むよ。さて、せっかく来てもらったのに申し訳ないんだが、君の到着が予想より早かったもんで、まだ準備が整っていないんだ」 へえ。 忙しなく手と視線を動かし、3台のパソコンを同時に操作する博士に感心。 とくに大きな反応は示さなかったが、博士はかまわなかったらしく、そのまま隣に立つ支部長に目をやった。 「ヨハン、先に君の用事を済ませたらどうだい?」 「…サカキ博士、そろそろ公私のけじめをつけてもらいたい」 呆れたように言った彼の言葉を無視して、博士は鼻歌混じりにキーボードを叩く。 そんな博士に男性はまた溜め息をつき、コホンと小さく咳払いをする。 「改めて、入隊おめでとう。まず、私の名はヨハネス・フォン・シックザール。このフェンリル極東支部の支部長を勤めさせてもらっている」 うわーい支部長改めて見てもイケメン。 似たような年代だったら確実に落とされかけてたわ。でも残念、私一応幼女。そこんとこちゃんとわきまえてる。 「ヨハンも新型のメディカルチェックに興味があったんだよね?…それも、こんなに幼い少女だ。そりゃあ気になるよねぇ」 |