運命の赤い糸の先は
*年上ヒロイン
いつかに繋がる未来なら
これからも君の隣で笑い合いたいと、そう願う
「凛くーん。コーヒー淹れたけど」
飲む?
声をかけても物音がしない。いつもならすぐにキッチンへ来てくれて手伝ってくれるのに。静か過ぎるリビングに首を伸ばして覗き込めば、ソファに猫のように丸くなって眠る姿が目に入る。
「私には風邪引くから駄目だって言うくせに」
コツンと無防備に晒されたおでこを軽く小突く。あ、と思い出して寝室からタオルケットを持ってくるとその丸まった大きな身体にかける。
「毎日、大変だもんね」
バスケに勉強にと目まぐるしく毎日が輝いているのだろう。好きなことだからどんな苦労も厭わない。真っ直ぐになれるものがあるっていいな、と昔を思い出して苦笑い。
「…凛くんが眩しい、な」
自分の高校時代というか昔を振り返りたくなくて瞳を一瞬閉じる。そして、ふと視線をローテーブルに移せば色取り取りの糸と布たち。弟くんたちの繕いかな?さすがお兄ちゃんだなと感心していると、一際私の目を引くものがあった。
「―赤い糸」
しゅるりとそれを引き寄せればそれは何の変哲もない糸。だけど、何だかそれが特別なもののように太陽の光を受けてきらりと光った気がした。その糸に魅入られるようにそっと小さな丸い輪を作る。ゆっくりと自分の薬指にはめて、反対側を凛くんへ。
「…えへへ、運命の赤い糸―なんちゃって」
自分でやっておきながら照れてクッションへ顔を埋めてしまう。緩くふらふらと繋がれた糸の先には大きな手。私をあたたかく優しく包み込んでくれるその手をずっと繋いでいたいと思う。ぼふっと凛くんのお腹に頭を乗せて未だ眠る王子様に口づけを送る。
「―凛くん、いつか…」
なーんてね、自分で言って思わず苦笑い。きっと夢の中の彼は知らなくていい私の願い事。
「これからも傍に居てね?」
大好きだよ、
そう呟いて私も眠りの世界へ旅立ってしまった
「―――っ」
ナマエさんっ
起きていた彼が見たこともないほどうろたえて
赤面していたことなど私は知る由もなかった
【運命の赤い糸の先は君がいい】
ううん、君しかないの