夢2 | ナノ


  えがおのやくそく






*未来捏造(何でも大丈夫の方向け)










「…はよー」

ガシガシと寝癖がついているであろう髪を撫でつけ、ゆっくりと上半身を起き上がらせる。カーテンの隙間からもれる光と優しい声が俺に降り注ぐ。

(早く起きなきゃ遅刻だよっ)

ぐいぐいと手を引かれベッドから立ち上げれば嬉しそうな表情。それにつられて笑えばどちらからともなく唇を触れ合わせる。

(和成、なんだか機嫌がいいね。いい夢でも見た?)

こじんまりとしたローテーブルに朝食を運べば、そう不思議そうな顔で尋ねてきた。

あぁ、こうしてお前が傍にいるから俺はいつだって笑えるんだぜ?ってそう言えば、すぐに熱を持つ頬を抑え始めた。それに重ねるように自分の掌をくっつければ、さらに熱があがったようで口をぱくぱくさせる。その姿にプッと噴出せばすぐに拗ねた表情にかわる。ごめん、ごめんってすぐ謝れば

(和成はホント調子良いんだからっ)

そう言いつつも顔は綻んでいて

「………好きだよ、ナマエ」

声に出せば募る愛しさに息が止まりそうになる
抱きしめようと手を伸ばしてみても空を切るだけ









「―――あっ、あぁ……」

ずっと、ずっと、続くはずの日常だった
それなのに、君は逝ってしまった
逝って、しまったんだ…



―三年前
ナマエには到底似合わない白いベッドに埋もれていて。たくさんの管の先には青白い君の顔。そばに駆け寄り手を握り締める。そうすれば、いつものように綺麗な瞳が俺を映すのに。和成、と少しかすれた声が耳に届き、笑おうとして口が歪んでいるのがマスク越しに見えた。

「……ナマエ、ナマエっ」

手を強く握って、寄り添って、君の言葉を聞き逃さないように。真っ直ぐに見つめて、その瞳が虚ろでも。俺は、君の最期の一秒まで、一緒に居たい。

(和成、生きて、生きて、生きて………笑ってね?)





「……もう泣かないって決めたのに。ざまぁねぇな」

コトリ
机の上に置いたフォトスタンドに触れれば、大丈夫!と笑う声が聞こえた気がして…俺は笑った。このモノクロの現実に残された俺はただ今日も生きている。それは、君の最期の約束があったから。

そう、君がそう望んだから
俺は笑って生きるよ
生きて、生きて、最期まで生き抜いて
そしたら会いに行くから
君の居る楽園へ会いに行くから









【えがおのやくそく】



どうか、それまで
ナマエも笑っていて








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