07*END
A few years later...
「いや〜まさか真ちゃんが医学部とはね」
「何が言いたいのだよ高尾」
「別にーまぁ……そうだろうとは思ってたけどさ。んであいつらはどうよ?」
「特に変わった様子はない。変わらずバスケ馬鹿なのだよ」
「ぷぷーっ違いねぇ。あいつらからバスケとったら何も残らねぇし」
数ヶ月前までNBAで活躍する青峰と火神の様子を久しぶりの休日を使い見に行ってきた。そしてなぜか専属コーチのようなことをやらされて帰国が伸びてしまい、今日の秀徳OB会にも遅れてきてしまったのだよ。
「そういう高尾はどうなのだよ」
「俺? 俺は相変わらず娘ちゃんと格闘の日々ってやつ?」
「まぁ高尾によく似て活発だからな」
「でも元気すぎるくらいでさー俺もうへとへと」
「お前はどうなんだよ緑間〜医者だろ〜ナースとか選り取りみどりじゃねーの?」
「ちょっ飲みすぎっすよ宮地さん!」
絡んできた宮地さんを高尾に任せ俺は一口酒を煽った。
「……まだ忘れられないと言ったら、お前は――」
こぼれた言葉を忘れようと俺は酒を口に運び続けた。
数日後。
休み明けの身体を整えていつもの病院へと歩みをすすめる。
「あ、真ちゃん先生おはよー!」
「おはようなのだよ」
机に着くまでにわらわらと子どもたちが群がってくる。屈んで頭を撫でれば嬉しそうに笑う。毎朝の光景のはずなのに、俺の心はまたおかしな音をたてる。
「真ちゃん先生っ今日のおは朝占い見た?」
「勿論なのだよ。蟹座は1位で―…」
「ラッキーアイテムは猿のおもちゃ、でしょ?」
相変わらず変なアイテムばっかりだよね〜
そう笑いながら近づく姿に俺は言葉が出なかった。
ありえない、ありえない。
こんなことは奇跡でも起きない限り、ありえない、のだよ。
何度も心は叫ぶのに、身体は自然と走り出していた。
そして、思い切りその身体を強く抱きしめた。
夢じゃないと、確かめたくて。
「………なん、何年っ待たせるのだよ」
「遅くなっちゃって、ごめん……返事、聞きにきたよ」
そう言いながら差し出したのはあの時と同じ花束。胸の中にある記憶が鮮やかに浮かび上がり、俺の心を温かくしてくれる。抱き締めた胸元を濡らす涙も、俺から溢れるそれも、何もかもが愛しい。
「そんなの、決まっているのだよ…」
お前と歩む未来しか俺は運命と認めないのだよ
そう耳元で囁けば、ありがとう…真ちゃんとあの頃と変わらない笑顔で微笑み返してくれた。