blue blue magic
*未来設定
少し肌寒くなったけれど、何の変哲のない休日の午後。鼻歌を歌いつつ洗濯物を干す。私より少し大きなシャツの皺を伸ばしつつ胸の鼓動が少しだけ早くなる。同じ柔軟剤で同じ香りがして同じ空間で同じ気持ちでいることが、こんなにも幸せなんだと日々実感する。その度に胸の鼓動は貴方のためだけに愛しさを募らせて早くなる。
「テツヤくん?今日の晩ごはん何にす、る…?」
空になった籠を持ち上げて部屋へと足を踏み入れる。けれど、見慣れた水色がそこには居なくて。確か先程まで2号と遊んでいる声が聞こえていたはずなのに…。そろりと視線を彷徨わせ少しだけ影が落ちる心を無視して私は部屋の中へ駆け出した。
寝室、お風呂場、キッチン。パタパタと足音を響かせて探す。とても大切で、大事で、愛しい水色を。
「ねえっ2号!テツヤくんは?ねぇっテツヤく、」
足元で鳴く2号を抱き上げようと膝を突けば視界の端に探していた水色が映った気がして。はっとソファの前へ移動すれば読みかけの本をお腹に乗せたまま、無謀に眠りの世界の住人がいた。
「…良かったぁ、」
はぁ〜と安堵の溜息は長い。元々、影が薄い彼のことだけど、この付き合いの長さで見失うことは少なくなってきている。けれど、まだ不安になることがある…この薬指の約束があるはずなのに、どうして不安になるのかな?
「……ん、ナマエさん?
「…テツヤくんっ」
ぼんやりと寝起きの彼の首に腕を回して抱きつく。ふわりと香るいつもの匂いにほっと心をが落ち着くのがわかる。じわり広がる愛しさに耐えていた雫がぽとり彼の頬を濡らしてしまう。
「ナマエさん、どうして泣いて」
「っわかんな、い……でも、涙がとまらなっ」
「………ナマエさん」
ぎゅっと抱き返してくれる腕の強さに胸が詰まる。こんなにもテツヤくんを想っている事が幸せなはずなのに。二人でいつはずなのにどこか寂しくて…。
「ごめっ…ごめん、ね」
「大丈夫ですよ。ボクはナマエさんが大好きですから」
「テツっヤ、くん」
「不安なのはボクも同じです。だから、二人で、一緒に、幸せになりましょう?」
ボクたちのスピードで夫婦になりましょう
そう、ふわりと笑い唇をふさがれる。
いつの間にか雫が止まった頬に、開けっ放しのベランダから優しい風がゆっくりと私たちを包んだ