夢2 | ナノ


  06







その日の帰り道、ふと携帯が点灯しているのがわかり手に取った。内容を確認すればメールで、誰からだと確認すると同時に俺は駆け出していた。遠くから高尾の呼ぶ声など俺の耳に届くはずもなかった。



―真太郎くん。いつもナマエと仲良くしてくれてありがとう。
よく真太郎くんの話をナマエから聞いていましたが、こうして連絡するのは初めてかもしれませんね。
本当は口止めされていたのだけれど…
今日の午後から#namw2#の体調が急変して真ちゃんと譫言で貴方を呼んでいました。
どうか来てもらえないかしらー



急いで、急いで。
力の限り走り続けるが体が追いついていないような感覚。それがもどかしくて悔しくて。それでも俺は走り続けた。どこかで夢であれと願いながら。





ガタンッ。
いつもより乱暴にドアを引けば、そこにはベッドを囲むようにして数人が立っているのが見える。柔らかい微笑みがよく似たその人は赤い瞳で俺を手招きしてくれる。

「…ナマエ、真太郎くんが来てくれたわよ」
「ナマエ……―」

たくさんの管につながれた彼女は、すでにその綺麗な瞳を閉ざしていた。日曜のはしゃいでいた彼女など実は俺が見た幻想なのかと疑いたくなるほど静かで冷たい彼女が、
ただそこに眠っていたのだ。

「……ナマエ?」

震える声で彼女の頬に手を伸ばせばまだ温かく…そう、ただ眠っているように見えてしまう。けれど、先程から耳を突き刺す抑揚のない音が俺を現実へと引きもす呪いのようで耳を塞ぎたくなった。










不思議と涙は出なかった。
いや、出てはくれなかったのだ。
心の中に在ったはずの温かいそれは、きっと彼女と共に燃えたのだと、そう思う…。ただ、俺の心の中にナマエの笑顔だけが木霊する。

「俺は―」

ナマエに何かしてやれただろうか?
誕生日もよくわからず向こうから…ふと、思い出したそれに目をやる。そして浮かび上がるあの言葉。

(それね、12倍してね?)
(あとね、返事は………また今度聞かせてね!)

「…12倍?」

もらった花束はバラが9本と名前がわからないピンクの花。カタカタとパソコンに文字を打ち込み調べれば浮かび上がる文字たち。





「……返事、はっ今度っと言って、いた…ではないっか…!」





9本のバラ:いつも想っています

ネリネ:幸せな思い出





「―…言い逃っげは、よくっない、のっだよ!」










108本のバラ:結婚してください





「……ナマエっ――」













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