05
そして、気づけば辺りは橙色に染まっていた。この時間だけは白い部屋が温かみを帯びているようで、俺はこの瞬間がとても好きだった。
「俺はそろそろ…」
「……うん。今日はありがとう」
「いや、こちらこそ…ありがとう、なのだよ」
小さく言えば聞こえなかったのか何?と聞き返すナマエを躱し俺は病室をあとにした。
入口の自動ドアをくぐれば、俺の耳に馴染んが声が飛び込んできた。
「あ、真ちゃん…!」
「どうかしたのか?」
ナマエの病室の窓を見上げれば大きく手を振る姿が目に入った。本当に十八かとそれに苦笑しつつ俺は応えた
「それね〜12倍してね?」
「それ?」
「あとね、返事は………うん、また今度聞かせてね!」
「何が―ー」
「真ちゃん、ありがとう!」
一段と大きな声で言われ、俺は聞き返そうかとしたがここが病院の一口だと再確認し諦めた。また来た時に再度問おうと思い、ナマエに手を振り返しつつ俺は帰路へとついた。
あれから数日、俺は変わらない日常を送っていた。近づいてくるWCに備えて練習は厳しさを増すが、今の俺はそれだけれは足りぬほど気持ちは昂っていた。
「いつにも増して真ちゃんやる気だねー」
「あぁ。負けられないのだよ……約束だからな」
「約束?」
「こちらの話なのだよ」
彼女に勝つと約束した。きっと優勝旗をもって会いにいくと。だから、だからどうか笑っていてくれ。
ただ、それだけを願っていた。