夢2 | ナノ


  02












出会いはそう、運命、なのだと
俺は今でも変らぬ想いを抱いて
今日を生きている










窓から入る柔らかな風は、いつも俺をあの時へと連れ戻す。白いこの部屋で、君と笑い合っていたあの輝かしい瞬間へと。





それは俺がまだ中学三年の頃。バスケ部のミーティングだけで、早く帰れた日だった。家までのいつもの道を何気なしに歩けば、小さな歌声が聞こえたような気がしてふと立ち止まった。

「…空耳、か」

立ち止まっていた足を動かそうとすれば、また流れてきた旋律に何故か俺は動くことはできなくなっていた。

「これは…ルドガーの――」
「愛の挨拶、だよ」

にっこり。
そう表すのが一番似合う笑顔で彼女は金網の向こうから俺をまっすぐに見つめていた。そう、それは今日のような風香る五月のことだった。



そこは都内でも有名な大学病院で、病院自体も大きいが庭の緑が多いことでも有名だった。そこの庭、外との境界線の金網に近くに彼女は立っていた。木下の影で、ふわりと笑って俺を手招きする。

「ねぇ、良かったらお話しない?」
「…俺とか?」
「うん。君と話がしたいの」

初めて会った人とそこまで話が弾むと思えなかったが。赤司とはまた違った効力のある彼女の言葉に俺は逆らえなかった。不思議な女だな、とただ漠然と感じながら俺はこの金網を超えるべく大きな入口へと歩き出していた。





「ようこそ〜」
「お邪魔するの、だよ」

先程の雰囲気はどこへやら。おどけたように自分の病室へ案内をする彼女を俺は何とも言えない気持ちのまま足を動かしていた。

「…ここは、」

想像して病室よりも、そう白が一層映える部屋だと思った。映えるというよりは白しかない部屋だった。彼女の肌も溶け込むような白さで、ただ彼女が着ている水色のワンピースだけが唯一の色だった。



初めて会ったというのに彼女との話は不思議と弾んで。気がつけば面会時間が終わろうとしていた。

「では、俺はそろそろ―」

帰るのだよ、と言おうとすればそれよりも早く俺の袖口を掴んで彼女、ナマエは笑った。―呼吸が止まるような、綺麗で、それでいて強い笑顔で。

「真ちゃん、またね」

今日、出会ってから呼ばれ続けた自分の名前は不思議な響きとなって心に落ちてきた。
ナマエに呼ばれると悪い気がしない、などと何故そのように思うのか理解できぬまま俺と彼女の日々が始まった。








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