夢2 | ナノ


  resolution





*未来捏造/悲恋










何度も、何度も
誓った言葉を君に





「きよちゃん危ないよ?」
「大丈夫だっつーの。おら、右手」
「…う、うん」

掛け立てかけれた梯子をゆっくりと右、左と足を動かして上れば、ぐっと右手をつかまれそのまま屋根の上へ引っ張りあげてくれる。怖い怖いと言いながらもこの景色があるから、この隣のぬくもりがあるから本当は平気だよ、なんて…言わないけど。

「やっぱ花火はここから見ねぇとな」
「ほんと毎年そればっかり言って」
「満更じゃねぇだろ?」
「…ばれてた?」
「ばればれだっての。本当、変らなさすぎだろ」

ぐしゃぐしゃと無造作に撫でられる頭に、思わず瞳を閉じてその心地よさに委ねてしまいそうになる。それを見越してか、はたまたただのタイミングか。その言葉を紡がれ私の意識を嫌にも覚醒させる。

「独身最後の夜くらい付き合えよな」
「…きよちゃんは、変らず暴君だよ」
「これが俺だからな」
「こらっそこは威張らない」

けらけらと笑い上戸なところも
月明かりに透ける亜麻色の綺麗な髪も
零れ落ちる優しい声も

全部、全部、全部
…明日からはもう隣に居ないのね

「…もうすぐ始まるんじゃない?」
「おう。夏はやっぱ花火だな」

わくわくと聞こえてきそうなほど、興奮した様子のきよちゃんはぐっと猫背になって花火が上がるであろう位置を見つめている。

「うん…花火、好きだもんね」
「あぁ、好きだな―」

「……私も大好きだよ」

ヒュルルルル…ドーン。
かき消された私の言葉にほっと息をついて、きよちゃんと並んで花火を見上げることにした。
だって、最後の最後まで貴方との時間を終わらせたくないから。










「…終わっちまったな、」
「あっという間だったね。でも、綺麗…だった」
「あぁ、今年も綺麗だった。毎年つき合わせちまって悪ぃな」
「うんん、私も……――好きだから」

それに気づかないほど馬鹿じゃないでしょ?
きっと敏い貴方だから、ずっと知っていたのでしょう。この愚かな私の感情を。けれど、それに蓋をさせるように優しくその言葉を紡ぐ貴方は私の―





「……知ってた。ありがと、な…姉貴」





慣れた筈のその言葉が胸を抉っていく。

いくら想ったって、いくら手を伸ばしても
ダメだってわかっていたはずなのに
この歳になっても諦められなくて
ずっと、ずっと、咲かない恋を育ててきました

でも、それは今日まで…
きっと明日にはその蕾は音もなく朽ちていくから





「――うん、ありがと……清志」

ぐっと両手を握り締めて、声が震えないように。貴方の中の私がいつも笑顔でありますようにと、ぐっと大きく口を開けて…閉じて。告げたくなくて…でも、ずっと告げたかった言葉を誰よりも大切な貴方に送ります。





「………誰よりも、幸せに、なってね?」

「――当たり前だろ…誰に言ってんだよ、轢くぞ」

物騒な言い方も変らないね
私の頭を撫でる手のぬくもりもかわらないよ
ただ、一つ変ってしまうのは
貴方が結婚して私の隣から居なくなること

ありがとう

ありがとう

だいすき

だいすきでした

さよなら、わたしの、たったひとりの、いとしいおとうと








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