夢2 | ナノ


  くちびるにあい










「宮地ー?」

地響きのような音が響くそこへ足を踏み入れて一言。見渡しても蜂蜜頭は見当たらなくて、どうしようかとしばし入り口で立ち止まっているとやたら明るい声が降ってきた。

「あれミョウジさんじゃないっすか」
「高尾くんか。ねぇ休憩中よね?宮地知らない?」
「んー確か今日はまだ来てないっすよ」
「え?」
「午前中は学校で夏期講習があるらしくて」
「そうだった、んだ」

てっきりあの部活馬鹿は参加してないと思っていたのに…。携帯に連絡しても繋がらないからこっちかと踏んだけど無駄足だったみたいね。

「ありがとう。教室へ行ってみるわっと、これ皆で」
「えっ差し入れっすか?」
「うん。ついでで悪いけど」
「やったーついででも何でもいいっすよ!ありがとーございまーす!」

今日のお弁当をつくるついでにゼリーを作ったをそんなに喜んでくれるとは思っていなくて。いつも以上にハイテンションになった高尾くんに面くらいつつ、私は手を振りつつ体育館を後にした。





「…どこにいるのよ、まじで」

轢くぞ、と思わず呟いてしまって慌てて口を塞ぐ。これだけはうつりたくなかったんだけどなーと、ぼやっと思考が飛びそうになるのを頭を振り戻す。

「体育館にも教室にも居ない……後は、」

まさかね、と思いながらも足はあの場所を目指す。今日は日差しは強いけれど、きっとあそこは居心地がいいから寝てるんじゃないかな、と思わず想像して笑いながら私は先程よりも速度を速めた。





「やーっぱり、ここか」

さわさわと風が揺らす大きな裏庭の木の下で、蜂蜜色は丸くなって寝ている隣にすとんと腰を下ろす。秀徳高校の裏庭のこの木の下は中々穴場で、今まで私たち以外に居たことはない。
よく二人でさぼってここで喋ったり…そう言えば初めてキスしたのもここだっけ、とあの慌てた宮地を思い出してくすりと笑ってそのやわらかな髪を撫でれば少しだけ暑い。
いくら日陰と言えど今は真夏。暑いことこの上ない。しょーがないと持っていた鞄から保冷財を出そそれにタオルを巻きつける。それを膝に置いてそっと蜂蜜色を更に乗せる。

「んー…」
「宮地?」

起こしてしまったかとそっと伺えばごろりと寝返りを打っただけで、彼はまた夢の中へ旅立ってしまったらしい。上下する宮地を見ていると自分までなんだか眠くなってしまう。

「…ふぁ、眠い、かも」

穏やかな寝顔の彼につらえるように私もゆっくりと瞳を閉じた。










「…んあ?なんか――」

講習終わりに少しだけ、と寄ったいつもの場所で俺はうっかり寝てしまったらしい。やっちまった、と時間を確認しようと腕を伸ばそうとしてその違和感に気づいた。

「―は、え?」

頭に柔らかい感触と人のものであろう体温。こんなことするヤツは一人しか居ない…ばっと身体を起こせば案の定そこにはアホ面したナマエが居た。

「…ナマエ、寝てんのか」

さしずめ俺を探しにきてそのまま一緒に寝てしまったのだろう。近くには俺が要望したであろう弁当のバックが見える。視線を戻せばまだ夢の中の彼女の姿。木を背もたれにして穏やかに瞳を閉じている姿に、言い様のない愛しさに胸がいっぱいになる。ぎゅっと握り締めていた拳を解きゆっくりとその頬に触れる。

「無防備すぎだっつーの…」

やわりと撫で付ける手にも気づかないでナマエは眠り続ける。肩で切りそろえられた髪が夏風に攫われさらさらと音をたてる。それに引き寄せられるように唇を寄せれば、ふるりと睫毛が揺れた。

「んー、みや、じ?」
「おー。起きたかお姫様」
「え?」



「お姫様は王子様のキスで目が覚めんだろ?」










【くちびるにあい】

そう言いつつもう一度唇に寄せる
きっと後で顔を真っ赤にして抗議されるだろうが、それよりも今はこの愛しい気持ちを唇からナマエに送ることにする








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