夢2 | ナノ


  ヤ(ヤグルマギク:幸福感)







*未来捏造









いつからだろう
隣に居ることが
名前を呼べることが
微笑みあうことが
日常になって、当たり前になって、
変らない、けれど変っていく毎日が愛しいものだと










「今日は遅くなってしまいました」

はぁと両手をすり合わせて息を吹きかければ、ふわりと白いものが手をすり抜けて空へと消えていった。急ぎ足でいつもの見慣れた道に足を進めていると、ゆっくりと白いそれが頬に落ちては舞っていく。

「……どうりで寒いわけですね」

まだ春には早すぎるこの季節には珍しく、ふわりふわりとそれは視界を覆うように降ってきた。
いつからだろう、この光景が僕は苦手だった。
降り積もっていく白に飲み込まれ消えてしまうんじゃないかと。ただただ、その怖さが心を支配されるような気がしたから。
けれどそれが好きな季節に変わった瞬間があった。それは、きっと、そう――君に出逢えたから。





「テツヤくん、おかえり」
「ただいま帰りましたナマエさん」

バタンとドアを開ければふわりと笑う君が居て。そっと、僕の肩に残っていた雪を払ってくれる。ゆっくりと包み込まれた頬にあたたかい両手。自然と口元が緩むのがわかって僕は小さく笑った。

「もーう、明日はマフラー忘れちゃ駄目だよ」
「はい。気をつけます」
「それ何回目?」

そう怒った口調で言いながらも顔は笑っていて。心配してくれるナマエさんが見たくて、と言えば、きっと照れてしばらくは口をきいてもらえないかもしれない。それは嫌だなと大人しく言葉を飲み込んだ。僕の頬に触れていたナマエさんの手に僕の手を重ねて少しだけ擦り寄る。

「ナマエさん、とてもあたたかいです」
「テツヤくんが冷たすぎるの。先にお風呂はいってくる?」

「えぇ、そうします。でも、その前に…」
「えっなにテツヤく――」

お風呂場へ駆け出そうとするナマエさんの右手首を掴み、後ろから抱き込んでぎゅっと腕をクロスさせる。振り向こうとする身体を押さえ込んで、ぎゅっと想いを届ける。

「ありがとう。大好きですよ、ナマエさん」
「ちょっ、あ…テツヤくん…!」

驚いて固まった君をするりと解放して頬にキスをひとつ。パタンとお風呂場へ身体を入り込ませると戸の外側からパタンと座り込む音と、恥ずかしさで唸りだした声が聞こえて僕はまた小さく笑った。





【とけのこる、あい】

君が存在する幸せ
ずっと、ずっと
抱きしめて離しませんから
覚悟しておいてくださいね?








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