夢2 | ナノ


  ツ(ツルボラン:生涯信じます)







*未来捏造










君と最後の恋をする










桜の見頃が落ち着き、過しやすい季節のこと。目が覚めて飛び込む凄い寝癖に私は思わず噴出してしまう。

「何度見ても凄いわね」

くすくすともれる笑いを隠すこともせず、その寝癖をなでつけていれば、うぅと声が聞こえ手を離した。

「テツヤ、おはよう」
「おはようございます、ナマエさん」
「変らず凄い寝癖だよ?」
「そうですか」
「もーう。さっ起きて!今日は公園に行く約束でしょ」
「はい勿論覚えてます。ですからそんなに服を引っ張らないでください」

ちょっと拗ねた声もなんのその。ぐいっとテツヤを起き上がらせて私は勢い良くベッドから飛び出しカーテンを引けば、まさにピクニック日和。楽しみだねっと振り返ればベッドに腰掛けこちらに緩く微笑む姿に私の心臓がひとつ跳ねた。

「ナマエさんのお弁当も楽しみにしてます」
「任せて!美味しいの作るからね」

何度だって私はテツヤに恋をする
こんなにも心が穏やかな日常が私には手放せない幸せ。だからこれが私の最後の恋にしようって。ずっと、ずっと思ってるのは秘密。





*





「途中でシェイク買わないとね」
「はい。今日は暑いですから特に美味しそうですね」

手を繋ぎ公園までの道のりを二人でゆっくりと歩く。幾度となく通ったこの道はお決まりで。だけど、けして飽きることもなくいつも新しい気持ちにさせてくれます。それは、きっと、ナマエさんのおかげですね。

「到着!やっぱり素敵だね〜」
「えぇ、ちょうど花たちも見頃のようですね」

公園には花たちが咲き乱れ地面が色鮮やかに見るものの心を惹きつけてやまない。それは彼女も同じのようで。

「ねぇねぇ、テツヤ!」
「どうかしましたか?」
「ちょっとお花みてくるねー!」
「あ、ナマエさん…まったく」

しょうがない人ですね、と思わず笑ってしまう。何年たっても子どものようにはしゃぐ姿はとても可愛らしく。この心に増え続ける好きの感情は止まる事を知らないようです。





*





「テーツヤ!」
「おかえりなさい、ナマエさ―」
「はいっお土産」

パサリとテツヤの頭上のそれを落とせば訝しげな表情。恐る恐るそれに手で触れれば理解したようで私はにっこりとピースサインをした。

「テツヤに似合うと思って」
「ボクがですか…それよりナマエさんのほうが似合います」

そう言うなりその花冠を私の頭へ載せ微笑む。ぱらりと風に攫われていく花弁と相まってその光景に息を呑む。
テツヤはきっと気付いてない。その表情がどんなに私を惹きつけて離さないなんて。

「ナマエさん?どうかしましたか?」
「…うっううん、何でもない。それよりお昼にしよう!」

見惚れただなんて恥ずかしくて言えるはずもなく。ぶんぶんと頭を振って否定すればそれ以上は聞いてこないテツヤ。それが寂しくもあり、らしいなと苦笑した。

「さぁ、どうぞ召し上がれ!」
「流石ですね。どれも美味しそうです」

ふわり、本当に嬉しそうに笑うテツヤにまた一つ恋をして。私たちは大きくいただきます!と手を合わせた。





*





「ナマエさん、少し行きたい所があるのですが」
「いいよ〜公園の中?」
「はい。着いてきてくれますか?」
「うん!」

差し出した掌にぎゅっと握り返されボクは自然と笑顔になる。一つ一つのことがこんなにも愛しいだなんて、君に出逢うまで知りませんでした。

「どこに行くの?」
「着くまで秘密です」
「えぇーテツヤのけちっ」
「何とでも」

くすりと笑えば不機嫌そうに尖らせた唇。膨らんだ頬を指でつつけば耐え切れなくなって噴出す姿。こらーっと声をあげつつ本当は怒っていないことなど互いにわかっていて。見つめあった瞬間にまた笑い出して。

―あぁ、これをきっと幸せと呼ぶのでしょう

そう心の中に言葉が落ちていった。





「此処です」
「……え、此処って」

「ボクたちの始まりであり、思い出の場所ですね」

うんうんと大きく首を上下に振る姿を見て頬が緩む。君は忘れてなんていない。大切な場所だと言ってくれてボクは少しだけ泣きそうになった。

「こちらに。少しだけ座りませんか」
「うん………ホントここは花の絨毯だね」
「えぇ本当に。とても綺麗ですね」

見渡す限り色鮮やかな花たちで埋め尽くされている此処は、ボクたちが出逢った場所で、想いが通じ合った場所。だからこそ今日、此処でもう一度はじめようと思ったんです。

「今日はナマエさんに大切なお話があります」
「…テツヤ?」

いつになく真剣な声でそう告げればびくりと肩を揺らすナマエさん。ふらりと影のさした瞳が悲しくて。ボクはそっと頬を包み込んで視線を合わせる。

「そんなに不安そうな顔しないでください。悪い、話…ではないと思います」
「えっそれはどう言う――」

可哀想ではありますがプチリと花をとりくるりと輪をつくる。不思議そうにボクを見つめるナマエさんにボクはたくさんの想いを込めて左手にそれをはめた。

「ナマエさん、僕と幸せになってもらえませんか?」
「……テツ、ヤ…?」

「まだボクは頼りないところがあって君を泣かせてしまうかもしれません。それでも、それ以上に笑顔になれる、幸せな時間をナマエさんとつくることを誓います」

「…テっツヤ……」

「だから、ボクと結婚してください」

そう言い終ると同時に泣き崩れたナマエさんを抱きとめれば背中にまわされる細い腕。ぽんぽんとゆっくりと頭を撫でれば落ち着いたナマエさんがボクの胸から顔を上げて、今日一番の笑顔で大きく頷いてくれた。








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