夢2 | ナノ


  テ(デージー:純粋)












「お待たせしました」
「ううん、大丈夫」

私も今来たところ、といつもと変らない返答にほっと胸を撫で下ろす。触れ合っていた視線をゆっくりと解いた代わりに、そっと彼女の左手に指を滑り込ませて右足を動かした。

「もうすぐ練習試合だっけ?」
「そうですね。来週の土曜です」
「…見に行っても、いい?」
「勿論。ナマエさんに応援してもらえるなら百人力です」
「そんなっ褒めても何も出ないんだから!」

夕陽に照らされた長い影を踏みつつナマエさんを除き見れば、ふいと明後日の方向を向いてしまった。その姿にくすりと小さく笑えば繋がっていた手に力が込められた。

「少し、痛いです」
「痛くしてるの!笑うテツヤくんが悪いんだから」

そう言いつつも、じわりと手の感覚はゆるくなり、すぐにいつもの感触に戻りボクは頬が緩むのがわかる。
途切れた会話も苦しくない。それは、オレンジ色の光がボク達を優しく包み込んでくれるからでしょうか。隣を歩く愛しい温度に寄り添うようにゆっくりと歩く。君の家まであと少し、まだ少し、もっと、もっと君と居たくて。

「星が綺麗ですね」
「本当だ〜流れ星みれるかな?」

「どうでしょ―」
「あ、えっ―」

きらりと小さな光のリボンが一瞬夜空を彩る。そのタイミングの良さに思わず立ち止まる。空を見上げたまま立ち止まる二人、傍から見ればなんて滑稽なのでしょう。けれど、それも楽しいと時間だと感じるのはきっとナマエさん、貴女とだからですね。

「ふふっ思わず固まっちゃったね」
「そうですね。まさか本当に流れるとは思わなかったですから」
「うん、本当驚いちゃった」

顔を見合わせて笑い、きらきらと輝くそこに吸い込まれそうだと夜空から帰り道へ視線を戻そうとすれば

「あっ!」
「ナマエさん?」

再び歩き出そうとしたボクは思わずつんのめってしまう。どうかしたのかと後ろを振り返れば少し悲しそうな表情と出逢う。すぐに視線を合わせれば悲しみは和らぎ、けれど拗ねたものにかわった。

「…お願い事するの、忘れた」
「…そんなことですか」

それぐらいで大げさだと思いつつも、彼女にとっては重要なことのようで。お願い事をしたかった理由をあれこれ並べ立ててくる。その姿に苦笑しつつも、肝心なお願い事の内容に触れないことへの疑問が沸き起こる。

「そんなにナマエさんが頼みたいお願い事って何ですか?」
「えっ、あ……それは、その―」

先程の勢いはどこへやら。急にぱっと下を向き口ごもってしまう。やたら前髪を触るのは照れたときの仕草だと貴女は気づいてないのでしょう。
小さなその手をとり、そっと抱き寄せる。この愛しい人が離れていかないように、ぎゅと強く、けれど優しく愛を込めて。

「流れ星にお願いしなくても大丈夫ですよ」
「…どうして?」

「ナマエさんのお願いは全てボクが叶えますから。それに―」

ボク達の願い事はきっと同じですから、ね
そっと耳元で囁けば頬に感じる熱が上がるのがわかって、また小さく笑ってしまう。

「――テツヤくん、ずるい…何でもわかっちゃうとか」
「そんなことありませんよ。ナマエさん限定です」

ぎゅっと握り返された手から感じるぬくもりを確かめつつ、ボクは愛しい人の唇に想いを送った。










【二人の流れ星】



流れる星への願い事
明日も君が笑顔でありますように








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