ともだち

草花の匂いがすごくいい匂い。
風で揺れて、その香りがぼくの元へと漂ってきた。

「ぽよ…?」

半分目を開ける。
ぼく、どうやらうたた寝をしていたみたいだ。
匂いと風に誘われて、今度はしっかりと目を開けた。
目を擦って、まだ寝ている部分がありながらも起き上がる。

ポップスター…プププランドは今日も平和。
なんだか早い気がした。
あれから一ヶ月が経とうとしてる。
あれから…ランディアやローア、そしてマホロアとの別れの日から。

「カービィ!」

そんな事を思っていたら、近くから聞こえて来た女の子の声。
青いバンダナをつけたワドルディ、ワドだ。

「ここにいたんだね」
「うん、風に当たって横になってたらいつの間にか寝ちゃってたみたい」

僕の言葉に笑顔を見せるワド。
そうして僕の隣に座った。
ワドは、ぼくと一緒に戦った一人。
メタナイトとデデデも一緒に戦った。
…あの日は思いもしなかったんだ。
せっかく出来たともだちと、戦う事になるなんて。

「カービィ…?」

再びその時の事を思い出してたら、隣から心配するようにワドが声をかけてくれた。
ぼくは笑顔を作ってワドを見る。

「あ…ごめんね」
「ううん、大丈夫だよ。考え事…?」

空を見上げて、ぼくはそのまま声を出す。

「ランディアやローア、それから…マホロアの事思い出してたんだ」

せっかく出来た、ともだち。
ぼくは、ぼく達はそのともだちと、戦った。
そのともだちの一人…マホロアは、全宇宙を危機に陥れようとした。
平和なポップスターや全宇宙を、ぼく達は守りたくて戦ったんだ。
けどその結果…マホロアっていうともだちを失った。

「マホロアの事…嫌いになったの…?」

そう思っていた事を話したぼくに、ワドがそう問い掛けてきた。
ぼくは顔を横に振り、視線をワドにうつして声を出した。

「確かにマホロアは世界を征服しようとした。でも…ぼくたちに接してくれたあの時のマホロアが、嘘だとは思えないんだ」

ワドは頷いてくれる。
「わたしも同じ」、そう言うように。

「…マホロアを助けたかった」
「助ける事…出来たと思うよ…?」
「でもマホロアは…」
「ありがとう…って。そう、あの時言ってたよね…?」
「…!」

魂が解き放たれたあの瞬間。
マホロアが、ぼく達にそう言ってくれた事。
よく覚えていた。
あれが最後の、マホロアの言葉だった。

…失ってなかったんだ、ぼくは。
マホロアっていうともだちを。
今は話も出来ない遠い所へ行っちゃったけど…もしかしたらあの時に、本当のともだちになれたのかもしれないって思ったんだ。

「ワド、ありがとう」

笑顔を見せて、ワドにそう言う。
ワドは安心したように笑顔を見せてくれた。

「行こう、ワド」
「え、どこへ…?」

ワドの手を握って、ぼくは歩きだした。
マホロアと出会ったあの場所へ。
ぼく達からもありがとうって、マホロアに伝えるために。

***

マホロアソウルとの戦いで見る事が出来る解説から、マホロアには辛い過去があったのではないか、カービィ達が負ける度にマホロアの体力が減ったり攻撃に手加減が加わる事を知ってから、カービィ達と戦うのを躊躇っていたのではないか、などと色々想像してしまって、そうして書けたお話です。

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