いつも一緒


「随分と家を留守にしなきゃならなくなるな…」

今日も賑やかな大江戸はぐれ町。
町を歩きながら、このはぐれ町に住むチャキチャキの江戸っ子、ゴエモンはそんな事を呟いた。
ふと、ゴエモンにとって大切な人が今日も売り子をしている茶店を通り掛かる。

「おみっちゃんにも暫く会えねぇな…」

再びそんな事を呟く。
おみつが出してくれるお団子を買っていこうかと思った。
しかし今食べると、今彼女に会うと、団子が…いや、それよりもおみつの事が恋しくなるのではないかと思い、茶店に入るのをやめた。
殿様に頼まれたのだ。
はぐれ町から随分と遠い町で、最近おかしな事ばかりおきているらしい。
その原因を突き止め、何とかしてほしいと。

「早く終わらせて、戻って来るか…!」

そう言って茶店を通り過ぎる。
随分遠い町に行くのだ。
家を暫く留守にする。
今まで何度も旅をして来た。
これぐらいの事はゴエモンにとっては容易だ。
出発は明日の朝。
現在はお昼を過ぎた時間。

「そうだ、じいさんにはこの事言っとくか」

歩いている途中にそう言って、物知りじいさんのいる伊賀の忍者屋敷に行く事にした。
ほろほろ寺の先にあるワープ装置から行けば、忍者屋敷へはあっという間だ。
ほろほろ寺に行き、ワープ装置が見えて来た頃、その前に誰かが立っている事に気付く。

「ヤエちゃんじゃねぇか」

その声を聞いて、ヤエちゃんと呼ばれた女性は振り向いた。

「どうしたんでぃ?忍者屋敷に用なのかい?」
「行くかどうか迷ってたの」

「迷ってる?」とゴエモンは問う。

「暫く忍者屋敷にも行けそうにないから行こうかと思ったけど…」
「行けそうにない?どうゆう事でぃ?」

聞くと、ヤエもゴエモンが殿様に頼まれた事を知っていて、その原因を突き止め解決しようとしているらしい。
それで暫く忍者屋敷へは、いや、それ以前に別の理由がある事がゴエモンにはわかった。

「恋しくなるんじゃないかって、思ったんじゃないかい?」
「え…!?」

それを聞いて、ヤエは思っていた事を当てられて思わず驚き声をあげる。

「おいらもなんでぃ。…おみっちゃんに会おうかどうかって、さっき迷ってたんでぃ」
「ゴエモンさんも…」

暫く戻れそうにない。
大切な人の声も聞けず、顔も見れず、話も出来ない。
しかしここで会って、留守にする事を知られてしまっては、悲しむのではないかと。
恋しくなるのではないかと。

「エビス丸にも、今回は黙って行こうと思ってるんでぃ」
「え…どうして?」

ゴエモンが言った事に不思議に思うヤエ。
エビス丸はゴエモンの相棒と言える存在。
旅も、いつも共にして来た。
それなのに何故なのか。

「これは…おいらが頼まれた事でぃ。エビに迷惑はかけられねぇからな」

「教えたらまた着いて来ちまう」とゴエモンは付け足す。
ヤエは目を伏せ、言葉を口にした。

「そう…。そういえば…ゴエモンさんはどうしてここに?」

物知りじいさんには言っておこうとここに来た事をヤエに話す。
ヤエは納得し、ゴエモンが戻って来るまでここで待つと言ったその時。

「聞きましたで〜ゴエモンはん!」
「それはないでゴザルよ」
「な、エビス丸!?」
「サスケさん!!」

声の主は、エビス丸とサスケで、ゴエモンとヤエは驚いた。
どうしてここにとゴエモンが聞くと、はぐれ町でエビス丸はサスケと会い、ゴエモンの家に行ったがいなかったので探しに来たのだと言う。

「遠く離れた町で、おかしな事がおきているのでゴザろう?」
「わてらも当然行きまっせ!」
ゴエモンの言った事は当たって、ヤエが会おうかどうか迷っていたサスケまでもが着いて来るという。

「おいおい、おいらが言ってた事聞いてただろ?これはおいらが頼まれた事で…」
「水臭いでんな〜ゴエモンはん!」
「拙者達も協力するでゴザルよ」

そう言うエビス丸とサスケに、どうすればよいかと考える二人に。

「わてら、いつも一緒でっしゃろ!」

そう、エビス丸は言った。
その言葉にゴエモンとヤエはハッとする。
どんな理由であろうといつも一緒に旅をして来た。
四人一緒で、どんな事も乗り越えて来た。

「…おう!そうだな!!」
「いつも一緒、だったわよね」

ゴエモンは笑顔を見せ、ヤエは微笑んだ。

「よし!明日の朝出発だぜぃ!エビス丸!遅れるなよ!!」
「何でわての名前を出すんでっか!!」

そんな二人のやり取りにサスケとヤエは思わず笑った。

「ゴエモンさん、明日までの残りの時間、おみつさんの所で過ごしたらどうかしら?」
「おう、そうだな!」

そう言ってゴエモンは茶店へと走り出した。

「待ってぇな〜ゴエモンはーん!わても行きまっせー!」

ゴエモンを追いかけて走るエビス丸を見て、後ろで微笑む二人。

「ふふ、私達も行きましょう!」
「そうでゴザルな!」

そう言って、ゴエモンとエビス丸を追いかけて、サスケとヤエは走り出した。

どんな理由であろうといつも一緒だった。
いつも共に旅をして来た。
今までも、そしてこれからも。

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