新たな事件の予感
†Case16:新たな事件の予感†
放課後になるなり、私はあやちゃんと紫音への別れの挨拶もそこそこに、テニス部へと急いだ。
『幸村君!!』
部室の扉を開けると、幸村君が優雅に足を組み部誌を書いていた。
幸村君は私に気付くと、ああ…という顔をして軽く笑う。
「その様子だと明日のこと聞いたようだね」
『明日、やっぱり試合あるの!?』
「うん。相手は四天宝寺中。珍しく大阪から来てくれるんだ。名前は両校のサポートに回ってくれ」
『あ、うん。…ん?今幸村君名前で…』
もう正式にマネージャーになったからね、と言って悪戯っ子のような笑みを浮かべる幸村君にそれもそうかと頷く。
大丈夫、部活しか呼ばないから安心してと幸村君に言われたため、私は素直に分かったと頷いた。
えーと…明日は大阪の四天宝寺と立海のサポート、と。
私は早速明日に向けての準備に取り掛かった。
ドリンクを準備していると、幸村君が私の頭を撫でる。
そしてにこっ、と優しく笑った。
「俺はコートのほうに行ってるから、何かあったら言ってくれ」
そう言って髪をぐしゃぐしゃにしてからコートに行った幸村君。
…何か、昨日から思ってたけど幸村君優しい?
††††††††††
部誌を書いていると名字さんが俺の名前を叫びながら勢いよく扉を開けた。
俺の妹とはまた違ったタイプだけど、何だか可愛い。
実を言うと、幽霊の一件より前から名字さんのことが気になってた。
幽霊大好きって噂で初めは変な子だな、っていう興味しかなかったけど、B組との合同授業とかも名字さんはいつも一生懸命に取り組んでいた。
そして、花壇の花に水やりとかも誰もいない朝早くからしてる姿にまた可愛いと思った。
だからかな、何事にも一生懸命で不器用な彼女を名前で呼んでみる。
案の定、彼女は少し頬を染めながらもきょとんとする。
そんな真琴が可愛くてドリンクを作る名前の頭を撫でた。
名前は不思議そうな顔をしながらも、気持ち良さそうに目を細めて擦り寄ってくる。
猫みたいだな…、と笑みを漏らしながらもコートに向かう。
君はもう忘れているんだろうね。
俺が荒れていた時に声を掛けてくれて、その行動に俺が救われたって事。
偶然なんか存在しない。
全ては必然で出来てるんだ。
だから、俺が君に惹かれるのも君が俺に関わるのも全ては必然であって偶然なんかじゃない。
惹かれる、と言っても丸井とはまた違った意味なんだけどね。
††††††††††
―ガチャ、といきなり部室の扉が開いて私は少し驚きながら振り返る。
『ブン太じゃん。どうしたの?』
そこにはブン太がいて、タオルを首に掛け、声のトーン落とせと言いながら私の隣にある椅子に座った。
「部室の裏に朝見た亀裂が出来てた。あと、仁王が嫌な予感がするって言ってたぞ」
『…分かった。他に何か変わったことはない?』
「赤也の奴、顔色が悪かった気がする」
私は作り終えたドリンクを部室に来た柳生君に任せる。
柳生君は、私が事情を説明すると快く引き受けてくれた。
「タオルのほうも私が皆さんにお渡ししておきます。名字さんはそちらをお願いします」
『うん、ありがとう柳生君』
私はブン太に亀裂の所まで案内してもらう。
部室の裏に今朝見た亀裂よりも大きいものが出来ていた。
これは完全に故意にやってる…。
私はリュークを呼び出し亀裂を消すと、リュークは消さないでおいた。
「名前、これってかなりやべぇんじゃねーか?」
ブン太の言葉に頷く。
きっとブン太もこれが異常現象で誰かが仕組んでることにも気付いている。
『…とにかく今は赤也君でしょ。赤也君呼んできて、ブン太』
この学校内に犯人はきっといる。
††††††††††
「どうしたんすか、名前先輩」
いきなり呼び出されて不思議そうな赤也君。
赤也君は明らかに誰かに生気を吸われている。
『赤也君、最近誰かとよく会うとか変なものが纏わり付いてくるとかない?』
この生気の吸われ方は生き霊か悪魔だろう。
身体が怠いし、生気の量が減ってるのに取り憑かれていないのが証拠だ。
そう考えた私は、赤也君に最近の身近な人物を尋ねる。
「そうっすねぇ…、そういや最近同じクラスの平井って女子とよくすれ違うっす。それに、前はあいつ大人しかったのに今はなんつーか、別人みたいなんすよ」
性格が変わるのは悪魔に身体を使われている証拠。
しかも別人みたいときた。
これは確定だ。
「でもそれがどうかしたんすか?」
『赤也君、最近身体怠いでしょう?その子に憑いてる悪魔に生気を吸われてる。だから、今度その子と接触したときにこの聖水をその子にかけて』
マジっすか!?と驚く赤也君に頷いて聖水を渡す。
今日の部活終わりにでもテニス部の皆に一応伝えるか。
…誰かが私かテニス部を狙ってるってこと。
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