江戸で『万事屋銀ちゃん』を営むと言う、坂田銀時さんと、従業員の志村新八くん・神楽ちゃんの3名と共に、私は村の近くまで戻って来ていた。

けれど、そこで私達が目にした光景は、明らかに違和感のあるもので。私は言葉を失ってしまう。



「銀さん、これは一体」



新八くんが坂田さんに問うた。坂田さんは、やはり面倒そうな表情を浮かべつつ、溜息を一つ。



「――やっぱり面倒な事になってやがったか」



そう。私達の目に飛び込んで来たのは、村の周りを、多くの夜盗達が取り囲むという異様な光景。

どうして?どうして夜盗が我が物顔でこの村に居座っているのだろう。金品が目的なら、さっさと奪って何処へでも逃げれば良いのに。どうして?



「奴らの目的は金目の物じゃねー、てこった」



確かにこの村は外界から更に離れた山の奥地にある為、村の大半が農業で生計をたてている小さな村だ。奪う価値のある代物など、ありはしない。

それなのに夜盗が村を襲う理由。一体、金品以外に何があると言うの?



「こう見張りがウジャウジャいたんじゃ、中の様子が解りませんね」

「どうするネ銀ちゃん」

「あ〜…そうねー。取り敢えず、村の人間が無事なのかを確かめるかー」



私は大きく頷いた。



「女中の名前を殺さなかったって事は、他の連中も恐らく無事だろう」

「本当ですか!!」

「ああ。…となればだ、何処か一カ所に集められてる可能性が高い」



坂田さんは少し考えた後、隣の私を振り返る。



「おい名前、この村で、村人全員が集まれそうな場所、どっかねーか」



今度は私が考え込む。元々小さな村という事もあり、村人は少数だ。それでも全員を同じ場所にとなると、それなりの広さが必要になる。となればやはりあそこしかない。



「集会が行われるのは、いつも長老様のお屋敷です。あそこなら全員を集められると思います!」

「そんじゃ、長老様のお屋敷に行ってみますか」



そう言って坂田さん達はスクリと立ち上がると、何故か、見張りの立つ方角に向かって歩き出す。

当然私は慌てた。慌てて止めようとしたのだが、

ドガッ、バキッ、ボキボキッ、ドスンドスンッ。



「………」

「ん〜?どうした名前」

「早く来ないと置いて行くアルヨ」



会った時から"ただ者"ではないと思っていた。だが、彼の…いや彼等の強さは少し異常だ。こんなにも容易く見張りを全滅させてしまう何て。一体彼等は何者なのだろう。



「ほら行くぞ。道案内がいねーと進めねーだろ」



そう言って差し出された坂田さんの右手。一瞬、この手を信じて良いのか、私の心に躊躇(ためら)いが生まれる。けれど、捕まっている両親や村人達の為、私はその手を掴むしかなかったの。



月の雫 04

≫最初と言う事で、ちょっと夢主のみをギクシャクさせてみました。これからどうやって彼女が信頼して行くのか、お話を考えるのが楽しみです。