提灯の灯りに名前の姿が照らし出された瞬間、俺は息をするのも忘れた…んじゃねーかと思う。
容姿がなんちゃら〜って話は聞いてた訳だし?遠目からでも「何か髪の色変わってんなァ」とか思ったし。そんな驚く事はねーと思ってたんだが、
「………」
俺、坂田銀時は、瞳を大きく見開いたまま硬直。目の前のマヨラーに至っては、銜えた煙草をポロリと落下させる始末だ。
それ程までに傍らに立つ名前は――綺麗だった。
「こりゃあまた偉く…」
「美人さんネ!」
ドSに続いた神楽の声で俺はハッと我に返る。
名前の奴も、近付いて来た神楽に向かっておそるおそる顔を上げると、虫の鳴くようなか細い声で、こう訊ねてやがった。
「気持ち悪く…ない?」
「何で?名前ちゃんはとっても綺麗ヨ!気持ち悪いって言うのは――コイツらの事を言うアル」
…て、おい!何で俺達を指さすんだ神楽ァァァ!
「しっかし本当にベッピンですねェ。これなら夜盗共に狙われんのも納得ってもんでさァ。こんなレアなメス何処で見つけたんですかィ、旦那?」
おめーはいい加減『メス』って呼ぶのを止めろ。
「別に見つけた訳じゃねェ。客の依頼でこの近くの村に用があってな。…で、帰り道で迷ってた所、夜盗に襲われかけてた名前ちゃんとバッタリ」
「運命の出会いネ♪」
神楽は嬉しそうに名前の胸(よく見りゃ結構デカい!)に顔を埋める。
くそ、何て羨ましい真似を!銀さんだって結構頑張ったんだぞ?バッタバッタ敵を倒してちょっとは格好良かったんだぞ?
少しくらい褒美があっても罰当たんねんじゃね?つー訳で、冥土の土産に俺にもハグさせろ!いや寧ろハグをして下さい!!
「旦那」
「あァ?何だよ」
「心の叫びがダダ漏れですぜィ」
「うっそォォォ!!??」
「…と、まあ軽い冗談はこれ位にして――」
えっ、冗談なの!?でも本当に漏れてるっぽかったよね??一体どっちなの!?おせェて沖田くーん!
「一つ解らねェ。確かに夜盗の数はそれなりでしたが、旦那が手こずる程の手練(てだ)れた野郎は一人も居ませんでしたぜ。わざわざ俺達なんざ呼ばずとも、旦那達ならどうにか出来た筈でさァ」
「………」
ドSの問い掛けに、俺はガシガシと頭を掻く。
「…別に。たいした理由なんざねーよ」
そう。わざわざ口に出して言う程の事はねェ。
――ただ、俺達がひと暴れしちまえば、こんな小さな村、あっという間に『全壊』だ。そうなりゃ悲しむ奴が居るだろ?
俺は村人も、そしてこの村自体も傷付けちゃならねーと思っただけだ。
それが俺達・万事屋に、必死に頭を下げて依頼した女……『名前の願い』じゃねェのかと、俺が勝手に思っただけだよ。
月の雫 12 ≫銀さん視点は面白い!
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