“俺の女になれ”

私がその言葉を理解するのに、幾分時間が掛かった事は言うまでもない。

何せ、先程までは『興味がない』だの『用がない』だの、酷い言われようだったのだ。それなのに、どうして急にそんな事を?思考が錯乱するのは至極当然の事だと思う。



「ち、ちょっと待てよ」



そして、高杉の発言に混乱したのは私だけではない。彼と共にこの場に赴(おもむ)いた筈の夜盗達まで予想外の展開に同様を隠せないでいたのだ。



「話が違うじゃねーか!その女は俺達が貰い受ける筈だっただろうが!!」

「ん?ああ。そうだったな。……だが、口約束なんてそんなもんだろ?」

「なっ」



ひょうひょうと答える高杉の態度に、男達の顔が見る見る赤く染まっていく。その内、夜盗の一人が刀を抜き取り、こちらに向かって身構えた。



「こうなりゃ力ずくで女を奪うまでだ!こっちにゃ、これだけの人数が居るんだ。構う事はねェ」



カチャ、カチャ。

それを合図に、次から次へと鞘(さや)から真剣を引き抜いていく夜盗達。

周囲は無数の刃に囲まれ、坂田さんと高杉は、未だ互いの刀を交えたまま。最悪の状況だった。

緊迫した空気が漂う中、夜盗の一人が動きを見せる。刀を振り上げ、こちらに切りかかって来た。

それに続けと一人また一人、刀を振り上げ、夜盗が迫って来る。だが彼等が私達の元へ辿り着く事はなかった。何故なら、

ドガッ!!



「「ぐわぁ!!」」

「銀ちゃん殺りたきゃ私を倒していくがいいネ」

「僕もいますよ!」



神楽ちゃんと新八くんが駆けつけてくれたから。



「二人共!!」

「すみません名前さん。僕がついていながら怖い思いをさせてしまって」

「新八は悪くないネ。悪いのは新八なんかに名前ちゃんを任せた私アル」

「Σそれ庇ってんのか貶してんのかどっちだ!」



…と、言う見事なボケとツッコミを繰り広げながら、二人は絶妙なコンビネーションで、夜盗達を次々に倒していく。

そんな二人を眺めながら改めて思う。彼等は本当に強いのだと。力も…そして互いを信じる絆も。



「さて、俺達も斬り合いをおっぱじめるか銀時」

「悪いが今はてめーと殺り合う気分じゃなくてね。またの機会って事で」



高杉と刀を合わせた状態で、ちらりと後方に視線を移す坂田さん。どうしたのかと疑問を感じた直後、辺りがバタバタと騒がしくなり、夜盗が「何事だァ」と叫んだ瞬間、





「御用改めである!」





凛とした声に、空気が震えた。視線を向けると、そこには黒の装束に身を包んだ、数名の男達。

現れたのは私でさえ話に聞いた事のある、江戸の治安を守る最強の組織。



「真撰組だァァァ!!」



月の雫 10

≫まだまだ勉強不足という事もあり、銀魂のDVDを大量にレンタルしてきました。取り敢えず、これを観てキャラクターの学習学習。もう直ぐ月の雫・序章…終幕です。