「いい女は言う事が違うねー。銀さん思わず惚れちまいそうになったぜ」



そんな冗談を口にしながら、私の傍まで歩み寄って来る坂田銀時さん。

彼の通った後には、なぎ払われ、気を失った夜盗の躯が横たわっていた。



「そいつにこんだけ言い返せりゃ上等だ。お前もそう思うだろ?…高杉」



そして、私の傍らに立つと、木刀の先端を包帯の男……高杉に向けた。



「暫く会わねェ内に、随分賑やかな奴らと連むようになったじゃねェか」

「別に連んだ覚えはねェがな。たまたま“こいつらの目的と俺の望み”が一致しただけの事だ」



高杉はゆっくりとこちらを振り返り、坂田さんと私を交互に見据える。

けれど、振り向いた高杉の目を見て、違和感を覚えた。先程までとは、何かが違って感じるのだ。



「――だったら、てめーはさっさと消えな」



坂田さんは木刀の切っ先を高杉から外すと、周囲に群がる夜盗へと移す。



「名前の面を拝むって言う、てめーの望みは叶ったんだろうが。てめーさえ消えりゃ、後の雑魚はどうとでもなるんだよ」

「嗚呼。そのつもりだったぜ。面を拝んだ後は、その女に用はねェ。その筈…だったんだがなァ」



――と、小さな声が聞こえた、次の瞬間だった。

ザッと土を蹴る音が響き、ハッとした時には、目前に高杉の姿があって。

目にも止まらぬその速さに、「え?」――と声を洩らす暇もなかった。何が起こったのか理解できず呆然と立ち尽くす私に、高杉は腕を伸ばし、顎に手を添えようとする。

しかし、そんな私達の間に一本の木刀が割り込み、その木刀を交わす為、高杉は己の刀を抜刀。


ガキン!!


刹那、私の目の前で二本の刀がぶつかり合った。



「…てめー『用がねェ』つっときながら、一体何しようとしてやがる。よい子が見てたらどうする気だ、コノヤロー…」

「そんなもん聞くだけ野暮だと思わねェか銀時。この俺相手に、それもこれだけの男に囲まれた状態で啖呵が切れるんだ。ここまで肝の据わった女は、そうそういるめェ」



薄笑いを湛えた高杉の右目が、静かに私を射抜いた。それは先程まで感じていた『違和感』を、確信へと導く、妖艶な瞳。



「名前といったなァ?ククッ、気に入ったぜ。お前……俺の女になれ」



そして告げられた高杉の言葉に私はただただ絶句するしかなかったのだ。



月の雫 09

≫『逆ハー』と言っておきながら完全に銀さんVS高杉さんの三角関係に進展中。取り敢えず、かぐや姫のお話を元に夢小説を考えておりますので、5人はお相手キャラを出演させるつもりです。問題は誰を選ぶかですね。銀さんと高杉さん。あと3人は…どうしましょ。