on Oct.14th

沢田さんの誕生日パーティーが終了した後、片付けを手伝っていた私は廊下の窓から庭に立つ見知った後ろ姿を発見した。



「沢田…さん?」



身に着けているスーツもパーティーと同じモノだから彼に間違いない。

それにしても、庭で何をしているんだろう。しかも、あんなに薄着で…。あれでは風邪を引いてしまうかも知れない。

私は近くに居たメイドさんに一言告げると、そのまま屋敷を飛び出した。










《綱吉side≫


10月も半ばになると、流石に夜は冷え込む。ブルッと肩を震わせ、自分の身体を抱き締めた瞬間



「風邪を引きますよ」



ふわりと肩にコートが掛けられた。振り返ると、そこには自分よりも遥かに薄着な名前の姿が。



「俺よりお前の方が風邪を引くんじゃないのか」

「私なら平気です。直ぐ戻りますから…。それより、今日はお疲れでしょう?早くお部屋に戻ってお休みになられた方が良いんじゃないですか?」

「分かってる。…分かってるんだけど、何か目が冴えちゃってさ…」

「それもそうですね。あんなに沢山の方がお祝いして下さったら、興奮して眠れないのは当然ですよね。――私、改めてボンゴレ10代目は凄いんだなと実感しました」



名前はにこりと微笑んで綱吉を見上げる。だが、綱吉はそんな名前に笑い返す事が出来なかった。

綱吉は何も答えず、屋敷とは反対方向に歩き出す。そんな彼の後を名前も慌てて追い掛けた。



「名前はさ、今日の来客者の中に、俺の誕生日を本気で祝ってくれてる人が何人いたと思う?」



前を歩いていた綱吉が静かに口を開く。問われた言葉の意味が分からないのか、名前は不思議そうに首を傾げていた。
そんな彼女を横目に、綱吉は苦笑を浮かべる。



「答えは“ゼロ”。誰一人、俺の誕生日なんて祝ってないんだよ…」



「そんな事っ」名前の唇がそう動き掛けたが、綱吉はそれを遮るようにふるりと首を振った。



「残念だけど本当の事だ。誰一人、俺の為に何て集まってない。あの人達が集まっていたのは――全部“自分の為”」



名前の足がピタリと止まる。それに合わせて綱吉も歩みを止め、ゆっくりと名前を振り返った。


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