on Sep.9th

普通『誕生日パーティー』と言うのは主役以外の第三者が準備するモノ…だと思っていました。



「おい名前、そこの泡立て器取ってくれ」



自ら率先してケーキを作る、本日の主役。獄寺さんを見るまでは…ι



「………」



私はシャカシャカと軽快なリズムで生クリームを泡立てる獄寺さんを複雑な思いで見つめる。



「な…何、人の顔じっとみてんだよっ///苺はちゃんと切れたのか!」

「苺は切れました。…切れましたけど…」

「だけど何だ!」



いやいや。「何だ」じゃないですよ。どう考えても可笑しいでしょう。



「どうして獄寺さんがケーキを作るんです?」

「どうしてって…今日は厨房に立つ人間がいねーんだから仕方ねーだろ」



そう。こんな大事な日に限ってコックさん達は皆さんお休みだったり、お出かけ中だったりします。どうやら前々から決まっていた事らしく、沢田さんも今更「休暇は無し!」なんて非道な事は言えなかったらしい。



「でもだからってどうして獄寺さんがお料理の準備をするんですか!」



私は目の前にずらりと並んだ、豪華な料理の数々を指さして叫んだ。何とこの10代目の右腕こと獄寺隼人さんはこの後開かれるご自身のお誕生日会の為に『ご・じ・ぶ・ん・で』お料理を作ってしまったんです!

可笑しいでしょう?可笑しいですよね?私の疑問は間違ってますか!!



「どうして他の方に任せなかったんです。私は勿論、沢田さんや山本さん、ランボくんだってお料理を作ってくれるって言って下さったのに…」

「10代目に料理なんて、そんな恐れ多い事させられる訳ねーだろ!だからと言って山本やアホ牛の世話にはなりたくねーからな。…それなら俺が自分で作った方が増しだ」



シャカシャカシャカ。さっきよりも更に激しく生クリームを泡立てる獄寺さん…。嗚呼、そんなに激しく泡立てるから。



「獄寺さん。ほっぺに付いてしまいましたよ」



私は獄寺さんに歩み寄り、彼の頬にそっと指先を伸ばした。










≪獄寺side≫


名前の温かい指先が頬を掠める。それだけで――信じられない位、鼓動が高鳴った。

何かと思って名前を見れば、アイツの指先には俺の頬に付いていたであろう生クリームが。


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