on Aug.26th
「………」
妹を褒められるのは嬉しいが、複雑な気分だ。
京子の奴。名前に何を頼んでいるのだか。
俺は受け取った手紙を開けて中を読む。そして――、言葉を無くした。
(全く。本当に何を考えているのだ…、京子)
呆れた顔をしつつも、妹の笑顔が頭に浮かんで自然と口元が綻ぶ。
「笹川さん?」
そんな俺を不思議そうに覗き込む名前。
俺は「何でもないぞ」と呟いきながら、再び手紙を封筒にしまった。
「京子が面倒を掛けてすまなかったな、名前」
「いえ。この位お安いご用ですよ。お誕生日のお祝いだったのですか?」
「…嗚呼。プレゼントの事が書いてあった」
*お兄ちゃんへ
お誕生日おめでとう
今年は何をプレゼントしようか沢山迷ったの
でもとっても素敵なプレゼントを思いつきました
もしかしたら一番喜んで貰えるかも知れないね。
「さて屋敷に戻るか」
「え?でもジョギングの途中なんじゃ――」
「名前を一人で帰す訳にはいかないからな。それに俺と一緒だと分かれば、沢田達も安心する。…お前、黙って屋敷を出て来たのだろう?」
そう問えば名前は「忘れていました!」と急に慌て出す。思った通りだ。でなければ沢田達が名前を一人で外出させる訳がない。これは今頃、大変な事になっているぞ。
俺は名前と並んで朝の街を歩き出す。
人の姿は殆どなく、まるで二人だけの世界が広がっているようだ。
屋敷に居ると必ず誰かがこいつの傍にいるからな。今はこの時間を存分に楽しもうではないか。
「そうだ!私も笹川さんにプレゼントを用意してるんです。帰ったら受け取って頂けますか?」
「おお!それは極限に嬉しな。勿論だぞ!!」
「ふふ。よかった。…あの笹川さん。遅くなりましたけど、お誕生日おめでとうございます!」
そう言ってふわりと微笑む名前に俺も笑顔で答える。普段なら長く感じる屋敷までの道のりが、今日は酷く短く感じた。
*私からのプレゼント
それはね…
お兄ちゃんに『名前ちゃんと二人だけの時間』を過ごして貰う事だよ
喜んで貰えるかな?
――お兄ちゃん。
- H.B RYOHEI -
on Aug.26th
(京子からのプレゼント。極限に嬉しかったぞ)
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