マイボスマイヒロイン
日も沈み、人々が寝静まった頃、ボンゴレ10代目事・沢田綱吉の部屋をとある人物が訪れていた。
「調子はどうだ?」
「嗚呼。大分楽になったよ、リボーン」
綱吉は相手の顔を確かめる事なくそう告げる。
流石、超直感を司るボンゴレ]世…と言いたい所なのだが、リボーンが部屋を訪れる事は初めから分かっていた事だったり…。何せ、自分から呼びつけていたのだから。
「それでどうだった?」
「全く問題なしだ」
「だと思った」
「嬉しそうに言ってんじゃねー…。ボスの面子丸潰れだぞダメツナ」
「アハハ、確かに」
苦笑を浮かべながら、コホリコホリと咳込む綱吉。そんな元教え子の姿にリボーンは小さく溜息を零し、静かに今日一日の出来事を話し始めた。
◇ ◇◇
「10代目が風邪を!!!」
それは今朝の朝食時の事だ。中々ダイニングに姿を現さない綱吉を心配したメイドの一人が、彼の部屋へ様子を見に行った所――ベッドの上で苦し気に唸り声を上げていた綱吉を発見したと言う。
「そ、それで10代目のご容体は如何なんですかっ、リボーンさん!?」
「ただの風邪だ。ツナの奴は『問題ない』と言ってやがったが、熱を計ったら39度近くあったからな。今日一日は安静にしてた方が良いだろ」
「…10代目の体調管理も正面に出来ねー何て、俺は、俺は右腕失格だ!」
一人悔しそうに壁を殴りつける獄寺を隣で見ていた山本は笑顔でスルー。
「でもよ小僧。今日の予定はどうするんだ?…確か、結構重要な会談が一つ入ってた筈だぜ?ツナ抜きで出来るのかよ」
「その事なら心配要らねーぞ。ツナから伝言を預かって来たからな」
伝言…?二人は顔を見合わせ不思議そうに首を傾げる。それを見たリボーンはニヤリとニヒルな笑みを浮かべ、そして驚く事を口にしたのだった。
「今日一日。名前にボス代行をさせるそうだ」
◇ ◇ ◇
そんなこんなで一日限定ボス代行を務める事になった名前。勿論本人は「出来ません!」と必死に首を振っていたが、そんな事を聞き入れて貰える筈もなく、彼女の意志とは関係なしにボスとしてのお勤めが始まった。
まず彼女に与えられたのは『客人の接待』――だったのだが、その客人を見て獄寺はこめかみを押さえ、山本は苦笑した。
「何でてめーらが此処に居るんだよっっ」
獄寺が怒鳴るのも無理はない。何せ、その客人と言うのが…。
「う゛おぉぉぉい。それが客人に対する態度かぁ!ボンゴレのガキ共」
「ししし。姫がボスになったって聞いたから挨拶しに来たんじゃん」
「ボンゴレの坊やを蹴落としてトップに立つなんて凄いじゃない〜♪」