ジョーカーは渡さない

「は?食事??」



机の上に積み上げられた大量の書類。その尋常ではない紙の束と格闘していたボンゴレ10代目・沢田綱吉は、報告にやって来た己の部下の言葉にピタリと動きを止めた。



「はい。ボンゴレの同盟ファミリーであるクレッシェンテファミリーから直々のお誘がありまして、その際には是非歌姫様もご一緒にとの事です」



部下Aの報告を聞きながら、綱吉は「来たか」と小さく溜息を零す。



「それで、返事の方はどう致しましょうか」

「………」

「10代目?」



本来なら『直ぐに断りの連絡を入れて置いて』…と、笑顔で言い返す所なのだが、今回ばかりはそうもいかない。



(よりにもよって“クレッシェンテ”とはね)



クレッシェンテファミリー。ディーノ率いるキャバッローネ程大きな組織ではないが、それに次ぐ位実力のある大型組織だ。――しかし、その力故に現在の同盟条件に不満を持ち、何かに付けて改善を求める、最も問題のファミリーでもある。



(また厄介なトコに目を付けられたな)



さて、どうしたものか…。綱吉はグシャリと髪をかきあげ、もう一度深く溜息を零すのだった。




◇ ◇ ◇


それから数日後。



「あ、あの…何処か可笑しい所はないですか?大丈夫ですか??」


鏡の前で念入りに服装のチェックをする名前の姿を、傍にいた獄寺は不機嫌そうに、山本は苦笑混じりで眺めていた。



「んなモノ適当で良いだろ…。…そこまでめかし込んでどーすんだよ」

「どーするって、同盟ファミリーのお偉い方とお食事をするんですよ!失礼があったら、沢田さんや皆さんにまでご迷惑が掛かるじゃないですか」



掛かって結構だ…。獄寺と山本は内心そう呟く。

今回の食事会。名前は『ただの会食』だと思っているようだが、そうではない。同盟条件でのいざこざもあって、仕方なく今回の誘いを受ける事にした綱吉…。しかし、翌日。相手側から自分の息子も連れて行きたいとの申し出があったのだ。



「アイツ等、最初から自分の息子と名前を“引き合わせる事”が目的だったんだろーな」



名前に気付かれないよう、山本は小さな声で獄寺に話し掛ける。



「…嗚呼。だから表向きは『会食』何て言ってやがるが、裏を返せばただの『見合い』だ。それも奴らの一方的な…な」



恐らく『ボンゴレの歌姫』と言われる名前を丸め込んで、自分達の待遇を良くさせようという魂胆なのだろう。下種(げす)な奴らが思い付きそうな低俗な考えだ。



「獄寺さん、山本さん本当に変じゃないですか」

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