まどろみ
私は両手一杯の資料を抱えて、ある方のお部屋の前で立ち尽くしていた。
理由は簡単。先程から何度もノックをしているのに、中から何の応対もないからなのだ。
いらっしゃらない――と言う可能性はゼロ。何故なら、この資料を持って行くよう頼んだリボーンさんが「今なら部屋に篭もってる筈だから…」と仰っていたからだ。
私は小さく溜息を吐いて再びノックをした。でもやっぱり返事がなくて。
「沢田さん。勝手に失礼しちゃいますよ?」
私は最後まで言い終わらない内に扉を開けた。
そして、目に飛び込んで来たのはソファーに寝ころぶ沢田さんの姿…。
「成る程。お昼寝をされていたのですね」
私は彼の机に資料を置くと、そっとソファーに近付いた。スースー…と気持ち良さそうに眠る彼の寝顔を覗き込む。
この人の多忙さは私も良く理解している。だからこうして仮眠を取る事がとても重要な事も…。
「ゆっくり休んで下さいね、沢田さん…」
私は彼の頬に唇を寄せ、ちゅっと口付ける。身体を離して立ち上がろうとした矢先だった。ガシッと腰に腕が回わされ…、
「――っっ!!!」
身体が傾く。私はそのまま彼の上に倒れ込んだ。驚いて顔を上げると、
「お・は・よ」
「さ、沢田さんっ///」
そこには寝起きとは思えない、満面の笑みを浮かべた沢田さんが…!
「違うだろ、名前…。二人きりの時は何て呼ぶんだっけ??」
「……綱吉…さん///」
「良く出来ました」
ちゅ。さっきのお礼…と言うように髪にキスをされる。私は頬を赤く染めながら唇を尖らせた。
「…何時から起きていたんですか?」
「ん?名前がこの部屋に来た時からだよ。…俺が起きなかったらどうするのかな〜と思って寝た振りをしてたんだけど……まさか、あんな可愛い起こし方をしてくれるとは思わなかったな〜」
「あ、あれは起こそうと思ってした訳では///」
「分かってる。分かってるけど嬉しかったから。…普段からもっとキスしてくれれば良いのに」
「むむ無理ですっ///」
恥ずかしさの余り、ぎゅぅうと目を閉じる私。
「あはは。良いよ、それが名前だもんな。その代わり……俺がお前の分も一杯キスをする」
瞼・額・頬。綱吉さんは宣言通り至る所にキスの雨を降らせていく。ただ“一カ所”を覗いて…。
そして、おもむろに顔を離すと温かい両手で私の頬を包み込んだ。
「――さて、愛しいお姫様。最後はどちらにキスを致しましょうか?」
私の大好きな人は、こうして私をからかう事が大好きなのです。
まどろみ
‐1周年企画 第4位‐
(勿論、名前が答えなくても俺からするけどね)