お手をどうぞ
前にも何度か言ったような気がするが、私は一般よりは少し貧しい家庭で育ちました。
だから今現在私が参加している豪華な食事の並ぶ盛大なパーティーには縁も縁も全くない。
それなのに何故?どうして?ボンゴレの同盟ファミリーが開くクリスマス・パーティーに私が参加しているのだろうか。
それは、私の隣で会場の視線を一身に浴びている“男性の所為”…。
「あの沢田さん」
「ん?何?」
「…本当に私で良かったのでしょうか?」
ボンゴレ10代目の沢田綱吉様の同伴者に選ばれてしまったからなのです。
今回のパーティーは『異性同伴』が決まりらしく、沢田さんのパートナー役にと何故か!何故か私に白羽の矢が立った。
「勿論。だって、俺が名前とじゃないと嫌だって言ったんだから…」
女性なら誰もが見惚れる爽やかスマイルで私に笑い掛ける沢田さん。
でも、今日はその笑顔が凶器になっている。彼が私に笑い掛ける度、チクリチクリと身体中に視線が突き刺さるのだ。
会場にいらっしゃる全ての女性の視線が――!
「で、でもやはり何方か別の方を誘われた方が良かったんじゃ…っ」
「別って例えば?」
「へ?えっと沢田さんの隣に並んでも釣り合いの取れる人か、家柄の良いご令嬢…でしょうか」
残念な事に私はそのどちらにも当てはまらない。
どうして沢田さんは私を選んだのかな?彼なら誘って欲しいと言う女性も絶えなかっただろうに。
「だったら、やっぱり名前が適任じゃないか」
「・・・はい??」
もしもし沢田さん?私の話しを聞いてましたか?どう言う見方をすれば、さっきの話しに私が当てはまるのでしょう?
不思議そうに首を傾げる私を見て、沢田さんはクスリと笑みを零す。
それから、そっと私の頬に右手を伸ばし…、
「名前は綺麗だよ」
そう囁いた。触れられた頬から沢田さんの温もりが伝わって来て、瞬時に頬が紅潮する。それから私はフルフルと首を振って必死に否定した。
「どうして?今着てるオレンジ色のドレス姿だって、凄く綺麗だよ」
「さ、沢田さん!///」
お世辞だという事は分かっている。でも恥ずかしくて、恥ずかしくて。
私は沢田さんの顔を直視する事が出来なかった。
≪綱吉side≫
顔を真っ赤に染めて、必死に首を振る名前。そんな姿も本当に可愛いな。