君の腕で眠りたい
骸さんが任務から帰って来たとの報告を受け、私は急いで彼の元に向かった。出迎えに出たメイドさんから「何時もと様子が違っていた」と聞かされたからだ。もしかして今回の任務で怪我でもされたのだろうか。兎に角、自室に戻った骸さんの所に行ってみよう!
◇ ◇ ◇
一抹の不安を感じながら骸さんの部屋へ向かうと、部屋の前に見知った人影を発見した。
「クロームさん!!!」
「……名前…」
共に任務に出掛けていた骸さんの部下のクロームさんだ。普段、余り表情を変える人では無いけれど、今日は何処か落ち込んでいるように見える。クロームさんがこんな顔をされる何て、やはり何かあったに違いない。
「クロームさん!骸さんに何かあったんですか?骸さんは今中に…っ」
「…居る。でも今は………会わない方がいい」
「…どう、して――」
「……今、骸様に会ったら……“殺される”かも知れないから…」
「え」
私は自分の耳を疑った。『殺される』――って、誰が…?誰に…?
私は瞳を見開いたまま、目の前のクロームさんを凝視する。けれど、彼女は扉をじっと見つめたまま、一度もこちらを見ようとはしなかった。
「………一体……何が合ったのですか?」
「………」
彼女を見ていれば直ぐに分かる。ただ事ではない何かが、骸さんの身に起こったのだと…。
クロームさんは私の問いに俯いた。そして小さな声で話し始める。
「…任務中、骸様の昔を思い出させる出来事があって………それで…今は敵と味方の区別が付かなくなっているの…」
「昔を?」
「だから幾ら名前でも今はダメ!今の骸様に近付いたら…殺されてしまう!…それだけは…ダメ……絶対にダメ!!」
そう叫びながらクロームさんは自身の身体を抱き締め、その場に踞ってしまった。――クロームさん、本当に骸さんの事が大切なんですね。…そして、それと同じように……私の事も大事に思ってくれているんだ。
でも、だったら尚更このままにはして置けない。クロームさんが私達を大切に思ってくれているように、私もお二人の事が大切なのだから…。
私は自分に出来る事をしよう。私に出来るのは、ただ一つ。骸さんの傍に居てあげる事だけだ。