永久の誓い

――幸せそうに笑う貴女が嫌いだった。


――誰にでも良い顔をする貴女が嫌いだった。


――私の嫌味も笑顔で返す貴女が…嫌いだった。



嫌いで嫌いで仕方なかった筈なのに、貴女が居なくなった途端、私の中に生まれた、どうしようもない“孤独と絶望”。

自分でも可笑しいと思う。どうしてそんな風に思ったのか。だが失って初めて気付いたのだ。本当に嫌いだったならば、私は相手にもしなかった筈だ…と。自分の視界に入れる事なく、ないものとして扱う。それが私――D・スペードだ…と。

けれど貴女に対しては、悉(ことごと)く理由を見つけ、暴言を吐き、対立する事を望んでいた自分。でもそれは、決して嫌いだったからではなく、その“逆”。幼い子供のように、貴女の気を引きたかっただけなのだ。

しかし、それに気付いた時には既に遅く、貴女は遥か彼方に旅立った後だった。貴女を壊したのは自分だ。“歌姫殺し”の汚名も甘んじて受けましょう。けれど歌姫。貴女が再びこの世に転生した際には、もう一度。もう一度だけ、私に貴女を守らせて下さいませんか?

他には何もいりません。これが私の…永久の望みです。我が愛しい歌姫。










◇ ◇ ◇


ふわり、ふわりと誰かに頭を撫でられる感覚に名前は意識を浮上させた。

けれど、まるで壊れ物を扱うような優しいその手付きに、浮上した筈の意識が再び深い眠りへと誘(いざな)って…。何度も何度も繰り返される心地よい感覚に、名前が顔を綻(ほころ)ばせると、



「――歌姫。もう少しだけ、眠っていて下さい」



穏やかな声色が頭上から降り注いだ。名前はその声に小さく頷き、そして再び規則正しい寝息を立て始める。幸せそうな彼女の寝顔に、デイモンは瞳を細めてこう告げた。



「そう。もう少し。もう少しで貴女を私の世界にお連れしますから…」



さらりと、絹のような名前の髪に、デイモンが再び指を絡ませようとした、その刹那。デイモンの動きがピタリと止まる。



「貴方の思い通りにさせる訳にはいきませんね」



それは強力な霧の幻覚を張り巡らせた室内に第三者の声が響いたからだ。この中に侵入できる者など早々いる訳がない。デイモンは眉をひそめつつ、声の主を振り返った。

デイモンの視線の先に立っていたのは、三叉槍を握り締め、右目に『六』の文字を宿す一人の男。



「]世の霧の守護者」

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