トクベツな存在
「ぁ」
その日。歌の練習も兼ねて庭で発声練習をしようと思っていた私は、大きな木の下に珍しい先客を見つけました。木陰で寝転んでいたのは…。
「雲雀、さん?」
ゆっくりと近付き、そっと顔を覗き込む。
するとスヤスヤと規則正しい寝息が聞こえて来て、私は更に驚いた。
だって前に聞いた事があったから。『雲雀さんは木葉が落ちる音でも目を覚ます』って…。
なのに私が近付いても起きる気配がない。余程疲れてるんだろうな。幹部の方は任務も上級ランクばかりらしいから…。
「折角気持ちよさそうにお昼寝されているんだし、起こしたら悪いよね」
私は静かにその場から離れようとした。だけど
カサッ。
運悪く足下の枯れ葉を踏みつけてしまった。
私は咄嗟に背後を振り返る。お、起こした!!?
「…………ん…」
けれど雲雀さんは小さく身じろいだだけで、再びスースーと寝息を立て始めた。ほっ、良かった起こさなくて…。
私は安堵の溜息を零して、彼の隣に腰掛ける。
下手に動くと起こしてしまいそうだから、責めて雲雀さんが起きるまでは此処に居た方が良いと思ったのだ。彼の寝起きの悪さはボンゴレ内でも有名だから…ι
ははは…と乾いた笑みを浮かべて私は隣を見る。すやすやと気持ちよさそうに眠る雲雀さんは、何だか黒猫みたいだ。
そういえば、こんな風にまじまじとこの人を見るのは初めてかも知れない。起きて居る時に凝視すれば「何見てるの?」と確実に咬み殺されそうだからιけれど、こうして見ると改めて実感する。
「やっぱり綺麗」
沢田さんやリボーンさんも含めて、幹部の方々は皆さん整った顔立ちをしているけれど『綺麗』という単語が一番似合うのは雲雀さんだと思う。
(私もこの位綺麗だったらな…)
そよそよと優しい風が辺りの木々を靡かせた。同時に雲雀さんの黒髪もさらりと揺れる。
(…もしかして、かなり………さらさら?)
髪が長い分、人より手入れには気を使っている方だ。だからこそ、ちょっと…羨ましい。髪質の問題もあるだろうけど。
どの位さらさらなのかな?一度疑問に思ってしまうと駄目だった。その後に待つ恐怖より好奇心の方が優ってしまい…。