永久の誓い
『…歌姫、……歌姫…』
――また、この夢。
最近、同じ夢をよく見るの。顔の見えない誰かがずっと私の事を呼んでいる、とても不思議な夢。
『何処にいるのですか』
ただね、私を呼ぶその声が余りにも切なくて、胸が張り裂けそうになる。
『歌姫』
だから「私は此処」と叫んであげたいのに、それを遮(さえぎ)るように何かが私の邪魔をする。
『駄目だ、歌姫。あの声に答えてはいけない』
――誰?
『答えては…いけない』
次第に遠退いて行く声。お願い待って!どうして答えてはいけないの?
『歌姫、貴女は何処に』
あの声は、あんなにも必死に、私を呼んでくれていると言うのに―…。
◇ ◇ ◇
ふっと重い瞼を開ける。寝起きの所為で視点が上手く定まらず、ぼやけた天井を見つめながら私は小さく声を洩らした。
「また…あの夢だった」
一体なんだと言うのだろう。これで、あの夢を見るのは6日連続だ。同じ夢なら何度か見た事はあるけれど、ここまで立て続けに見るのは初めて。
(それに私を呼ぶ夢の中の声は一体……誰?)
必死に相手の姿を思い浮かべようとするも、やはり駄目。まるで頭の中に靄がかかったように、ぼやけて見える。おかげで今日も目覚めは最低だ。
◇ ◇ ◇
ボンゴレ邸の朝は早い。それは何時も決まった時間に、成る可く揃って朝食を取るようにしているから。今日も雲雀さんと骸さんを除いた守護者全員がダイニングに集結。
任務などで中々時間の合わない夕食とは違い、皆でテーブルを囲むこの時間が私は大好きだった。
「おい、名前」
朝食を食べ始めて暫く経っての事。右隣に座った獄寺さんに声を掛けられ、私は視線を上げる。
「何でしょうか?」
「お前、ひょっとして体調悪くねーか?」
問われた質問に私は「え?」と瞳を丸くした。だって、私には全く思い当たる節がなかったから…。どうして獄寺さんはそんな風に思ったのかと、不思議そうに首を傾げる私に、当の獄寺さんは呆れたように溜息を零す。
「たく。朝、顔洗った時、鏡見なかったのか」
そう言って私の額に右手を伸ばす獄寺さん。突然の行動に頬が紅潮した。