summer time
夏といえば『青い海』と言う事で、今日は海水浴にやって来ました。
ザワザワザワ。
……やって来たのは良いのだけど、何なのだろう。この周囲から集まる異常なまでの視線は??
(――何て、考えなくても分かりますよね)
私は小さく苦笑を洩らす。現在、このビーチの視線を独占している面々。それは何を隠そう、私の友人達だったりします。
「ねえねえ君達、その荷物重そうだね?良かったら、俺らが運ぼうか?」
私達が場所取りをしているビーチパラソルから目と鼻の先。そこで、本日何度目になるか分からない声掛けをされている人物こそ、私の友人で、ビーチの視線を独占している笹川京子さんと、三浦ハルさんの二人組だ。
「ありがとうございます〜。でもハル達のパラソルはもう直ぐそこですから。ね、京子ちゃん」
「うん♪だから私達の事は気にしないで下さい」
二人は慣れた様子で相手の誘いを断ると、何事もなかったかのように私達の元に帰って来る。
「ただ今戻りました〜」
「二人共お待たせ。クロームちゃん。私達がいない間、何もなかった?」
「…大丈夫。名前に近付こうとする人は、みんな私が追い払ったから」
「それなら良かったです〜。ハル達、ずっと心配していたんですよ〜」
大量の荷物を抱え、戻って来た二人が開口一番に発したのはそんな台詞。
だけど、話の内容が可笑しくはないか?どう考えても心配をするなら私ではなくクロームさんの方だと思うのだけど…?
「え〜っと、私なら大丈夫だと思いますよι皆さんと違って声を掛けられる事はありませんから」
さっき声を掛けて来た人達だって、明らかにクロームさん目的(※本人自覚なし)だったし…。
だから心配無用と告げた瞬間、彼女達が戻って来た逆方向から穏やかな話し声が聞こえて来た。
「そんな事はありませんよ。貴女は“絶対無二”の存在なのですから」
「ふ、風さん!!」
私は慌てて振り返る。声の主は、京子さん達よりも更に大量の荷物を抱えたアルコバレーノの風さんだ。彼の傍にはイーピンちゃんの姿も見える。
「言ったでしょう。今や裏社会(マフィア)の間では歌姫……つまり名前の事が知れ渡っているのですから、貴女の力を欲し、付け狙う輩はごまんといると。警戒するのに越した事はないでしょう」
「私もお兄ちゃんに『名前ちゃんを頼む』って任されてるから!」