fear holiday
「肝試しをやらないか」
連日続く猛暑の中、本日も大量の書類と格闘していた筈の沢田さんが突然そんな事を言い出した。
沢田さんの補佐をしていたリボーンさんと、そのリボーンさんの補佐をしていた私は同時に顔を見合わせ、小首を傾げる。
「肝試し…ですか?」
「そう。肝試し♪」
「「・・・」」
「ん?…何だよ、二人共。その冷めた反応は」
いや「何だよ」と拗ねられても、これが普通の反応だと思うのですが。
「突然どうされたのです?肝試しをやろう何て」
「暑さの所為で頭でもいかれたんじゃねーか」
「失礼だぞ、リボーン」
相変わらず手厳しい突っ込みを入れる元・家庭教師のリボーンさんに流石の沢田さんも苦笑いだ。
でも暑さの所為で判断が鈍っているというのはありかも知れないな。そうでなければ、何の前置きもなく突然「肝試しをやろう」だ何て、普通は言い出さないと思うから。
けれど我らのボスに普通は通じなかったようだ。
「兎に角、これはもう決定事項。今晩ボンゴレの屋敷を使って、肝試し大会をするから♪勿論ファミリーは全員参加ね」
分かった?そう言って穏やかな笑みを浮かべる沢田さんだが、目が…目が全く笑っていない。
こうなったボスは誰にも止められない。それは私もリボーンさんも重々承知している事なので…。
「諦めるしかねーな」
「そのようですね」
リボーンさんは大きく肩を落とし、私は乾いた笑みを浮かべるのだった。
◇ ◇ ◇
その日の午後は任務そっちのけで肝試しの準備が行われる事になった。
あちらこちらで釘を打つ音や、指示を出す誰かの大声が響き渡って、まるで学校の文化祭みたい。
「それにしても、まさか此処まで大掛かりにするとは思いませんでした」
「やると言ったら本格的なにしないとな。ほら名前。手が止まってるぞ」
「す、すみません!」
ボンゴレのお屋敷を使って大々的に行われる事になった肝試し大会。
当初の予定では、明かりを消したお屋敷内を、懐中電灯を持って歩くだけ…と言うとてもシンプルなものだったのに、それがいつの間にか、肝試しの為だけに大掛かりなセットまで作り出す始末。
おまけに誰が一番本格的なセットを作れるかで、数名の守護者が競争を始めてしまったのだ。誰の事か…何て言わなくてもお分かりだろう。獄寺さん、山本さん、笹川さん、ランボ君の4名だ。