たまには素直に

好きな人が出来ました。

その人は他人と群れる事が嫌いで常に一人を望む、少し変わった人。でも優しい心を持ち合わせた、とても素敵な人だ。

時折垣間見るそんな彼の優しさに私は絆(ほだ)されたのだと思う。だって、そうじゃなきゃ…。



(こんなに“大好き”になったりしませんよ)



心の中でそう呟き、私ははあ…と溜息を零した。

自分の想いに気付いたのはつい最近。仲の良いメイドさんに『近頃溜息が増えましたね』と言われたのが始まりだった。

彼を好きだと自覚した時は戸惑ったりもしたが、今は幸せ。でも同時に切なくも感じる。つまり完全に恋煩いと言う訳だ。



(寝ても覚めてもその人の事しか考えられない何て……相当重症です)



再び零れる小さな溜息。――その時、通りがかった廊下の窓から庭で寝転ぶ想い人の姿を発見した。その姿を見ただけで一気に心拍数が上昇する。



(心臓の音が…煩い)



左胸に手を添えると、ドクドクドク。掌にまで激しい心音が伝わって来た。駄目だ。このままでは何時か心臓が壊れてしまう!そう思った瞬間、私は庭に飛び出していた。




◇ ◇ ◇


屋敷の庭で一番大きな木下。そこに彼は居た。

長い足を投げ出し、右手に読みかけの本を持ったまま気持ちよさそうに眠る、私の想い人――雲雀恭弥さん。私は乱れた息を整えながら彼の傍に歩み寄ると、起こしてしまわぬよう最新の注意を払いつつ傍らに座り込む。



「………」



長い睫毛。整った目鼻立ち。こうして寝顔を見ているだけで、胸が張り裂けそうになる。私は本当にこの人の事が―…。





「す――き、何ですね」





小さな声で呟いた雲雀さんへの想い。一度口にしてしまうと、後は簡単だった。相手が寝ていると言う事もあって、次々に言葉が溢れ出して来る。



「好き、です」



子供のように拗ねた姿も。時折見せる優しさも。貴方の全てが愛おしい。



「大好きです」



――好き。大好き。



「貴方が…好きです」





“雲雀さん”





そう口にした瞬間。グッと腕が引き寄せられ、身体が傾く。あっと気付いた時には……雲雀さんの胸に倒れ込んでいた。



「言うのが遅過ぎだよ」



直後、頭上から低いテノールが降り注ぐ。その声に導かれるよう私はハッと顔を上げた。――刹那、愉快そうに細められた漆黒の瞳と目が合って。

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