「夢流転」
―― 愛していたのに
――― 本当はどっちだったのだか、今ではもう分からない
――― ただ、今はもう取り返しがつかなくて
全て、無意味なことだ。
夢流転
「・・・・・・」
『 ッアル!!! 』 あの時叫んだのは俺だ
「・・・・・・」
『 ・・・え・・・ 』 あの時庇ったのは俺だ
「・・・・・・・・・」
『 やあぁっ、あぁぁああぁ −−−−−− 』 悲痛な叫びと無音の吐息 そして何かが滴り落ちて引きちぎれる音
「っ・・・」
『 ・・・まさか・・・ 』 俺が庇ったせいで、悲痛な叫びは生まれた・・・
「兄さん!!」
「っ!」
はっ、と一気に現実に引き戻された。
「また・・・思い出してたの・・・?」
気付けば、俺は冷や汗を流して拳を強く握っていたせいで掌から血が出ていた。
恐らく、顔面は蒼白なんだろうな。
目の前には、俺の両肩を掴んでるアルフォンスが居る。
「・・・まぁ、な」
適当に返事をしてアルの手をはずし、洗面所に向かう。
流石に冷や汗が髪の毛を皮膚にくっつけて気分が悪い。
― ジャー・・・
水道から勢いよく出る水を手に掬い、顔にぱしゃんとぶつける。
汗は流れた。
ふと顔を上げると、自分の顔がある。
「・・・情け無ぇ顔・・・」
鏡に映った自分の顔は、真っ青だった。
そして、情けない顔をしていた。
莫迦みたいだ。
未だに癒える事の無い傷を、そして消える事の無い罪を考えている。
夢にも出てくるし、こうして白昼夢のように見ることもまだある。
既に、3年も経っているのに。
本来普通なら、多少は癒えてる筈なのにな。
洗面所の窓には水滴がついていた。
あの日と同じように、雨が降っているらしい。
顔を拭いて、リビングに戻るとアルが心配した様子で俺を見ていた。
「大丈夫?兄さん・・・」
「ああ。気にするな」
「でも・・・やっぱり、大佐のところで診てもらった方が、記憶治療だって「良いんだ」でも!!」
「一生背負っていかなきゃいけないもんなんだ・・・真実は、消えないだろ?」
「・・・兄さんはそれで良いの・・・?もう3年も経つって言うのに、もう精神的にだって参ってるじゃないか!」
「良いんだ!!」
「っ」
「・・・構わないんだ」
アルの驚いた顔と、傷ついた顔を見たくなくて、外に出てると一言置いといてそのまま上着も着ずに出た。
引き止める声が聞こえたけど、そんなもん気にしない。
冷たい雨が頭、肩、顔に当たり往く中で、俺は一体何をしているんだろうか。
どれほど思ったって、考えたって、戻ることの無い真実の事実を。
既に涕は涸れた。
あの日から、泣けなくなった。
雨の中で泣けたら、隠せただろうに・・・今は泣くことさえ出来ない。
家に置いてきた弟に対して少し当たったな・・・八つ当たりしちまった・・・。
今更ながらに罪悪感が来るとは。
我ながら、本当に全てがあの日から狂ってることに気付いたのでさえ遅かったし、弟の言うとおり精神的に参ってる。
土に水が滲み込み、泥になり、少し歩きづらい。
このリゼンブールも、相変わらず変わってない。
改めてそう思う。
『 エドッ・・・・・・う、そ・・・ 』
あの時の光景が鮮明に浮かんだ ―
あの日・・・本部の軍から査定し終えて、帰るときだった。
近くの広場で騒ぎがあったようで、近くに寄ったんだ。
「何だろうね」
「さぁ・・・それより、そろそろ降りそうだ。早く帰ろうぜ」
「そうだね」
マイとアルは少し気にしているようだったが、雨の心配もある。
そこまで人が集まってるわけでもないし、事件でもないだろうと思ったからだ。
そしたら、それは俺の見当違いだった。
気にしていたマイが、その人だかりに突っ込んでいった。
俺もそれに着いていく。
すると。
「・・・死体だ」
あまりにもマイが簡単に受け止めすぎたため、俺も少しあきれたが・・・
そこには、死体が転がっていた。
女の死体だ。
しかし、この髪の毛に、服装・・・どこかで見たことがある・・・。
少しウェーブのかかった黒髪に
黒を基調としたドレス
そのとき、危機感に強いマイが突然顔を上げた。
そして、俺を突き飛ばした。
何事かと思って、マイの方を見れば既に両手を合わせて練成体制に。
マイの視線を辿ると
建物の屋上に立っているんだか、今にも落ちそうなところで「怖い怖い」とおどけて言う男が居た。
あいつははっきりと覚えている。
エンヴィーだ。
ということは、この女は・・・
と思っていると、エンヴィーが飛び降りてきた。
その気持ち悪さ故、集まっていた人間は早々に散っていった。
「ひっさしぶりぃーおチビさんにマイ♪」
軽く手を上げてこっちに向かってくる男に対して、俺も機械鎧を変形させて威嚇する。
「ラストおばはん、さっさと起きればぁ?」
「うるさいわね。疲労が溜まってんのよ」
「うわ、ほんとにおばさんだ」
「まぁ、このお三方も来てくれたわけだし良いじゃない」
そこでマイが言った。
「どういう意味?」
そこで、雨が降り出した。
アルの鎧に当たる雨音が、少し響く。
エンヴィーが身を乗り出して、話を持ちかけた。
「マイをこっちに渡してくれれば、おチビさんを人柱から外してあげるっていう話♪どう?」
正直言うなら、人柱という意味さえこっちはまだ理解をしていない。
しかも、そんな条件誰が飲むか。
マイは俺の恋人であり、信頼できる人間だ。
アルと同じくらいに。
どうしても、渡すわけにはいかない。
愛してる人間を渡してまで、自分を守りたいなどと思わない。
「・・・交渉決裂?」
「・・・当たり前だ!!!」
その勢いで、そのままエンヴィーへ飛び込んだ。
マイもアルも同じく、攻撃を仕掛ける。
その日が雨でなければ 足元は滑らずにすんだだろう
いや、雨でなくとも、同じ結果になっただろう
暫くの戦闘が続いた後、俺は止めを指してやろうと思って、大きな方式を頭に立てて地面に向けて練成した。
戦闘が長引いていたせいか、俺には集中力が無かった。
洞察力も無かった。
だから、攻撃を仕掛ける方向も見ていなかった。
― バシィィッッ
地面が大きく揺れ、突起物が出る。
その先には、アルフォンスが居た。
「ッアル!!!」
そう叫び、アルフォンスのもとへ駆け寄る。
そして、腕を引っ張り攻撃先から逃がす。
その時、俺はアルフォンスを守ることしか考えていなかった。
弟を守れるなら、どんな犠牲でも払おうと思ってしまった。
それがいけなかった。
アルフォンスを安全な場所へ引っ張るとき、何かが邪魔をした。
恐らく邪魔をしたのではなく、ただそこに立っていただけだろう。
けど、俺には邪魔になり、それを犠牲にしてアルフォンスを引っ張った。
「・・・え・・・」
疑問符をつけるような声があがった。
そして
「やあぁっ、あぁぁああぁ −−−−−−」
悲鳴と共に、次に聞こえたのはあまりの痛みに声さえあがらないような擦れた吐息。
「・・・まさか・・・」
俺が犠牲にしたものは
「うわぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁああぁぁあ!!!!!!」
思わず、泥に足を突っ込んだまま膝をつき、頭を抱え、叫んだ。
耐えられない。
あの後については、覚えていない。
ただ、目が覚めたときに、自分の体の節々が痛かったこと。
そして無我夢中で走った先にはモルグ(死体置き場)。
そこに行った後、俺は気絶したらしく。
それから目が覚めたのは、1ヵ月後のことだったそうだ。
そのときにはもうマイの死体は埋葬されていた。
「・・・って夢を見た。っておい!!聞いてんのか!!?」
「だーって長すぎるんだもん。もう飽きた」
「酷い・・・!!!」
「あはは、嘘だって。ちゃんと聞いてたよ」
二人が居るのは、ロックベル宅の寝室。
「アルも元の身体に戻ってたんだ」
「へぇ〜!」
「・・・早く、戻れるように頑張ろうな」
「・・・うん」
エドワードの長い話を聞き、アルフォンスはふと疑問に思った。
しかし、何故かその質問をするのに少し時間を使い、気まずそうに話した。
「・・・そういや、そのマイさんってどういう人だったの?」
「あー・・・確かー・・・黒髪で、俺よりも小さくて・・・」
「・・・へぇ・・・」
「ん?何かあったか?」
「うっ、ううん!?」
「・・・?」
アルフォンスには、「まただ・・・」と思う事実だった。
リゼンブールの墓地
そこには、”"name2"”という墓石が置いてある。
<後書きと言う名の言い訳。(=愚痴)>
遅くなって申し訳ございません(土下座)(何回土下座してるんだ私)
改めまして。
相互記念品として、夢小説あげさせていただきます!
・・・や、当初甘い予定だったのが、どうして私ってシリアスとか悲恋とかそういうの好きなんでしょうね嗚呼もう私は莫迦だ(落ち着け俺!;)
エドさんショックで記憶喪失になっちゃってますね。(他人事)
夢落ちなんだか微妙なとこですね。(←作者)
アルフォンス君大変そう。(他人事)
えぇっと・・・話、つかめなくてごめんなさい・・・;
でも、これ以上分かりやすく書くと逆につまらなくなりそうで・・・(苦)
最初は語りとかちゃんとやってたのに、後の方はもうぼろぼろですし。
何でこんなものを贈呈してしまうかと。
理由:管理人が無力だから
この一言に尽きます(汗)
こんなものですが、良ければ見てやってください!(や、これ見終わったあとだから見てるわけであって)
良ければ受け取ってください!!(何度目かの土下座)
To.Miss Sapuri
From.Kou Asana
厚狭拿 紅様から相互記念として頂きました!!!
私の書く駄文とは違ってとっても素晴らしいシリアス夢ですよ!!!
ありがとうございます♪
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