チョコレート甘い甘い匂いが充満するキッチンに、かちゃかちゃとかき混ぜる音が響く。 今日はバレンタインデー。 忙しくて作る暇が無かったから、今こうして早起きをして作っている。 出来上がったトリュフを用意した箱に詰めて、綺麗にラッピングする。 喜んでくれるかな…。 「甘い匂いがする〜」 「本当だぁ、美味しそうな匂い…」 「チョコの匂いだな」 「お腹すいた〜」 みんながぞろぞろと起きてきた。 「おはよう、みんな」 お菓子作りをする前に作っておいた朝食をテーブルに並べ、真ん中に人数分のトリュフを載せた皿を置く。 「これは僕からのバレンタインチョコだよ。食後に食べてね」 じゃあクリスを起こしてくるから、とリビングを後にした。 クリスとチェンの部屋に入ると案の定、クリスはぐっすりと眠っていた。 「起きて、クリス」 頬に軽くキスをして起こす。 「…ん…おはよ…」 「おはよう。はい、これ」 「…ん?なに、これ」 「チョコだよ。今日はバレンタインデーでしょ?」 「…あぁ、そうか。ありがとな」 「どういたしまして。…ねぇ」 「ん?」 「食べさせてあげようか?」 そう言うと、僕の言っている意味が分かったのか、クリスはにやりと笑い 「あぁ。頼む」 と答えた。 クリスの持っている箱からトリュフを取り出し、自分の口に含む。 クリスの首に腕をまわして、そのまま口付けた。 開いた口にトリュフを移し、唇を離そうとする。 と、後頭部を掴まれそのまま深く口付けられた。 「んっ…ふ…」 口の中に広がる甘い甘いチョコレートの味。 トリュフが溶けてなくなり、顔を離す。 クリスがトリュフをもう一つ口に含むと、どちらからともなく顔を寄せ口付けた。 残りのトリュフも同じように2人で食べる。 「…はぁ…はぁ…」 息を切らしクリスの胸にもたれかかると、クリスは僕を抱きしめたままベットに倒れこんだ。 「…レイ、今日の予定は?」 「…ん?特になにも…」 「じゃあ、もう一眠りして出掛けよう」 「…うん」 鼻腔を擽る甘い香りと、部屋中を包む甘い甘い雰囲気。 ご飯を食べ終えたルゥハンが呼びにくるまで、僕たちは夢の中でも甘い甘い時間を過ごしていた。 ハッピーバレンタイン、クリス。 END |