Cuddling


〈サファイアの誓い〉


皆が夕食を食べ終え、寮に戻る時間。ここホグワーツではそろそろ天文学の授業が始まる時間である。

「先生」

控えめに掛けられた声に振り向けば、後輩であり生徒であるヒルダがドアから顔を覗かせている。僕がホグワーツの生徒であった時代からずっと慕ってくれている彼女はよく僕の部屋を訪れる。

「やあ、ヒルダ。今晩は7年生の授業はなかったはずだ」
「授業でなければ、会いに来てはいけないんですか?それに天文学の授業は塔の屋上ですから、先生の部屋には入れません」
「ごめん、そういうつもりじゃないんだ」

彼女を突き放したいわけではない。最初こそ自分の弟や妹より年下の彼女をどうこう思うなんてないと思っていた。たまの気まぐれで冷たい態度を取ってしまった時期もあった。それなのに健気に何年も僕を想い続けてくれる彼女を見ていると、不思議と他の人と幸せになる彼女を想像できなくなっていた。できるのであれば、僕の隣に居て欲しいとすら思う。

「ヒルダ、君の気持ちは嬉しい。だけど僕は先生で君は生徒だ。想いを抱くのは自由だけど、今は誰にも知られてはいけない」
「誰にも…」
「ああ、亡霊ですら知られてはいけない。ここの亡霊はたまにお喋りが過ぎる」

特にピーブズは危険だ、と言うと彼女は少しだけ笑った。本当はヒルダにも痛い程に分かっているのだろう。僕に言われるまでもない。

「おいで、ヒルダ」

そう言い手招きすると彼女は素直に目の前までやってくる。そっと彼女の背中に腕をまわし、抱きしめる。

「今、君にできるのはここまで…僕は先生だから」
「はい…」

僕の腕から開放されたヒルダの美しいサファイアの瞳が少し揺らいだ。刻々と近付く死闘の時も、必ず君を守り抜くとその青玉に誓った。


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