デュランタは良い子である


デュランタは良い子である、否、良い子でなければならなかった。

母親は私が憎くて仕方が無い様だったし、父親も私を存在していないものとして見ていた。良い子で居ないと、せめて彼らを怒らせないようにしないと私の居場所が無くなる。元から居場所なんて無いのに、いっそのこと彼らを怒らせて私を始末させてしまう方が楽だったのに、ずっとそう思って振舞ってきた。

「お前が良い子でないからこうなるの、分かる?」
「私が良い子でないから……」

私がどれだけ努力しても変わるはずなかった。あの人達は私の事が憎いんだもの、憎い対象が良い子にしようとしていた所で何にも変わらないんだ。なのに当時の私は必死だった。

良い子で居よう、良い子であろうとし続けた姿勢が癖づいてしまって私は良い子の仮面が脱げなくなった。
人が好む態度も言葉も表情も、全て勝手に作ってしまう。咄嗟にそう振舞う。

レンギョウ マツリ、それが本当の名前。デュランタは母方の親戚が外国の人で、そちらの人達が呼びやすいように用意された愛称に過ぎなかった。存在はしていたが、結局家を出るまでの10年間、そう呼ばれる事はなかったのだけれど。

家を出てすぐ私は名前を捨てる決意をした。レンギョウ マツリは要らない、良い子であろうとしたマツリはもう必要ないし、良い子のマツリを演じなくても良いのだ。

なのに、おかしな事に、私はまだ良い子のレンギョウ マツリの人格を捨てられない。結局私は良い子ちゃんのふりをする、内心では全然思ってない事を平気で口にする。これが何かで役に立つと信じて。


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