在り来りな私


私が生まれた家は貧乏でも裕福でもなく、所謂普通の庶民だった。だけど、人が言う暗い過去の典型のドメスティックバイオレンスやネグレクトと呼ばれるものがある家だった。私はそこで10歳まで育てられた。

元は父親は私に優しくしていたらしい。だが、どうも私に嫉妬したらしい母親が暴力を振るい始めたのがきっかけだった、と後に祖母である人から聞いた話だ。

「アンタなんて産むんじゃなかった」

ずっと浴びせられてきた言葉、もう慣れた言葉、私の存在を全否定する言葉。

そんな母親を見て、父親は私の存在を認知しなくなった。私なんて居なかった事にしているらしい。そうする事で世間体を、夫婦仲を繕ったのだと、それも後から分かった事だけど。

「誰も私なんて必要としていない」
「そうよ、君は要らない子」
「誰?」
「さあね、誰だろうね」
「あなたは……」

『私ね?』

いつしか私の中には別の私が居た。彼女はいつも私に囁いた。「利用してやれ」と。そんな彼女と共に過ごし始めた頃ちょうど10歳になった。私は家を出た。往く宛などないのに何も持たずに家を出た。

私の名前はデュランタ、ある花からつけられた名前。デュランタの花言葉は“独りよがり”、そう弱く何も持たない私は独りよがりの依存を続けて生きていく方法しか見つけられない。

「君も、退けられた者か」

オモダカと名乗った研究者が私を拾ってくれた。彼は私にここに居なさいと言ってくれた。彼が私に生きる理由を与えた、だから私はまだ生きていて良いのだと自分を納得させられた。

研究者として彼の下で動けるうちはまだ私はここに居ていいのね?


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