白の手袋はバトルへの誘い


「見事な勝利でした、セヴリーヌ」

初のバトルシャトーにて早々にバトルに誘われ、見事な勝利で勝負を終えたセヴリーヌが他のナイト達の拍手に迎えられながら私の元に戻ってきた。彼女にそう声を掛けると彼女はふふ、と笑った。

「久々でしたが、私もまだ捨てたものではない様です」

「と、言いますと?」

今の言い方だとバトルこそは久々だがそれまでは勝負をして来た様にとれる。

「四年程前まで私、ジムリーダーを務めていました」

「あなた、色々やってきてますね…」

思った通りであった。それにしても氷タイプの手持ちとはどうも彼女らしい。四年程前と言うとやはり失踪のために辞めたのか。

「それも失踪を機に?」

「ええ、何というかそれは辞めたから失踪したのが正確な所です。」

彼女の言葉に首を傾げる。失踪するためにジムリーダーを辞めたのではなく、ジムリーダーを辞めたから失踪したという事か。

「ジムリーダーを続けられなくなったので辞めました。」

「それはあなたの都合で、という事ですか?」

「ええ、私の都合です。」

私に心を許していると言っていた彼女は前よりは幾らかは自らの話をしてくれる様になった。だが、やはりまだ自ら口にしない事もある様です。

「それにしても、あなたも人が悪いです。何故四天王をしていると教えてくれなかったんです?」

彼女は理由を聞かせて貰えます?と言わんばかりにニコニコしている。

「隠していたつもりはありませんが、言ってませんでしたね。そういえば」

「あら、そうですか…残念」

「何を残念がっているのですか…」

やはり知れば知る程話がしづらい気がする。

「四天王ズミ様、ですって…ふふ」

「馬鹿にしてますね?」

「いいえ、少しだけ」

「肯定するか否定するかのどちらかにしてください」

その様な会話をしているとセヴリーヌの前に白い手袋が差し出される。白い手袋は勝負しましょう。という誘いだ。

「あなたのせいですからね、これ…」

その手袋を見て彼女は私に小さな声で言った。

「私、バロネスの爵位を持つアンヌと申します。私とバトルをしてくださいませんか?」

「喜んでそのバトル、お受け致します」

今はバロネスという爵位の彼女だが、セヴリーヌ程の実力があれば私と同じ爵位の女性の呼び名に当たるダッチェスまで上がってくるのは時間の問題だろうとバトルフィールドに向かう彼女の背中を見る。


・・・


彼とサロンに入った時から気になっている事があった。サロンに居るナイト達がズミさんを見るなり驚き熱い視線を注いでいる、きっと彼はシェフ以外にも何かしている人だ。そしてそれは人からの注目を集めるもの。そんな事を考えているうちに彼の正体を知る事になったのだが。

四天王ズミ様、そう周囲から聞こえる。見た所女性人気が凄そうで。当たり前ですよね、何せズミさんは私から見ても明らかに美しい。私はエラい人とエラい場所に来てしまった様だ、それを自覚するのが遅過ぎた。

「私とバトルをしてくださいませんか?」

私へのバトルが私がズミさんと居る事への嫉妬の証なのだとしたら、私は喜んでそれらを受けたいと思う。私は簡単には負けない。

「喜んでそのバトル、お受け致します。」

 

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