今出せる答えは


「分からない…」

私はいつも通りチャレンジャーを迎え撃っていた。骨のないチャレンジャーは私とポケモンを前に平伏す。今日も今日とてその様子を見ながら色々考えている所だ。だが分からない事はポケモン勝負は芸術たり得るかどうかではなく、紛れもなくセヴリーヌの事であった。

私は、どうしたいのでしょう。彼女を必要以上に探る真似をして、知りたい事が分かった今それで満足して興味が失せたかと言われればそうではない。寧ろこのまま彼女と別れゆく事が歯痒く思えてならない。だからと言って彼女を一人の女性として好いているのかを自分に問うたなら何かが違う。何なのだろうか、この違和感は。ただ一つだけ答えが出ている事がある。私は噂の本の人達の様に彼女を“ブランシュ”として見るのではなく、セヴリーヌとして見ていたいと思っている。


・・・

「驚きました、あなたから私に話したい事があるだなんて。」

私はセヴリーヌの家を訪ねました。彼女は驚きながらも迎え入れ、私に紅茶を出してくれた。セヴリーヌの色違いのグレイシア確か名前はシーヴルだったか、が私の脚に擦り寄り、ソファの隣に座った。セヴリーヌはその様子を見ながら、随分ズミさんに懐きましたね、と笑う。

「この子が懐くのは私が心許した相手だけです。シーヴルは私の昔からの理解者ですから…何となく分かるのでしょうね」

「しーあ…」

彼女がシーヴルの名を口にした事に反応してか、シーヴルは小さく鳴いた。

「あなたが私に心許したと?」

「あら、未だにそうは思えませんか?…そうですよね」

いつも通りの喋りで彼女は笑う。たまに白々しくとぼける時に彼女がよくする冗談っぽく茶化す様な口調は、自らの正体を明かした彼女とは別人の様で調子が狂う。

「でないと、あんな事話しませんよ…」

「そうですね、すみません」

そしてまた彼女が微笑みながらその様に言う。彼女は微笑みの裏で何を思うのでしょう。

「今日あなたに話したい事というのはですね…」

「はい」

「あなたとは、今までの関係をそのまま続けたいと思っています」

私がそう告げると彼女は驚きの表情をし、理由を尋ねてきた。

「ずっと考えていました…あなたは“ブランシュ”の役割を負う人間です、でもあなたはセヴリーヌという人間でもある。あなたが“ブランシュ”であろうが私には変わりありません」

「…、ええ」

彼女は何か引っ掛かりがある様な相槌をうつ。私は続ける。

「あなたが“ブランシュ”であるから拒絶しようなんて露程にも思っていません。」

「…ええ」

「すみません、フィンブル伝説の事少し調べさせて貰いました。あなたが正体を知られる事を恐れていた理由が分かりました…化け物だと人々から拒絶されてきた事、ですよね?」

彼女が私の言葉に小さく首を傾げたので、その様に説明する。彼女は私の言葉を聞き納得した様だが、その顔は笑みの中でささやかながらに悲しげに頬を歪ませている様に思う。

「あなたの、言う通りです。」

「すみません、勝手に詮索する真似をしてしまって」

私が詫びると彼女は首を横に振った。私は小さく目を伏せている彼女を真っ直ぐに見据えた。

「要するに、セヴリーヌとしてのあなたも“ブランシュ”としてのあなたも私は受け入れたいという意思表示です」

私がそう言うと彼女は困った様な表情になり、良いんですか?と問うてきた。私が肯定すると彼女は少し瞳を潤わせ礼を述べた。

「改めてよろしくお願いします、セヴリーヌ」

「はい、こちらこそ。ズミさん。」

 

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