白き意識を宿す者


「まずそうですね、フィンブルというポケモンをご存知ですか?」

セヴリーヌは私にそう尋ねた。フィンブル、そういう伝説のポケモンが居るという事は聞いた事がある。私が頷くと彼女はまた話し始める。

「フィンブルは“破滅の冬”を司るポケモンです…」

「破滅の冬、ですか?」

「はい、破滅の冬が訪れれば人はおろかポケモンも住めない地に変えてしまうというまさに破滅を招く極寒気候です」

あまりにも内容に現実味がないがそれは口にはしない。

「より正確に言えばフィンブルが現れる時破滅の冬は激しさを増すというものですが、フィンブルは破滅の冬を招くポケモンとして伝説では伝えられています。」

「伝説ではというのは?」

私がそう尋ねると彼女は伝説も所詮は人の目線で見て作られたものに過ぎませんから。と言った。

「そしてその破滅の冬を封印するための役割を与えられた人間が存在します。その人間とフィンブルとでようやく破滅の冬を封印する事が出来るという仕組みなのですが…」

元はといえばフィンブルがあるひとりの女性にフィンブルの白き意識を分け与えた事がその人間を生み出したきっかけです。と彼女は伝説から遡った話までし始めた。

「彼女の子孫で尚かつ白き意識を宿して生まれた人間が、その役割を負う事になります」
彼女はそこまで喋ると一旦言葉を切った。そして私を見据える。

「私はその“ブランシュ”という役割を負った人間です。」

私が何者かという事はこれが全てなのですが、と彼女は言う。

「ですが、あなたの質問により詳細な説明を加えるためにはまだ話すべき事があります。」

何から話すべきなのでしょうか、なんて言いながら彼女は言葉を選んでいる様に見える。

「“ブランシュ”には破滅の冬をフィンブルと共に封印する他に、吹雪く日にフィンブルに祈りを捧げる務めがあります。その時“ブランシュ”は吹雪の中、雪山の祠に出向き最低でも朝方までの時間フィンブルに白き意識を捧げます」

場合によっては吹雪が収まるまでの時もありますが…なんて平然な顔をして語る彼女の言葉に理解が少し追いつかない。

「この様な務めを果たすために、私を含む“ブランシュ”は寒さで命を落とす事はありません。」

一つ目の質問の17番道路がマンムーの力を借りて進む道だと分かっていながら進んだ理由はそれです。と彼女は語った。

「それでもですよ、例え死なないとしてもあれはどうかと思います」

「…ええ、雪は嫌というほど見てきましたが、あの雪を見た時私の育った街を思い出しました。それで、でしょうか。」

この人は私の話を聞いているのですかね。なんて思いながら彼女の育った地について聞いた。

「首くらいまで雪に埋まる雪深い街でした…」

慣れですよ何事もなんて言う彼女の雪の慣れ方が恐ろしい、と思う。そんな恐ろしい地があるのか、と唖然としている私を見て彼女は少し笑った。

「今度行ってみてはどうですか?」

「遠慮したい所です。」

 

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