赤の落葉が地に


「幾つか、あなたにお聞きしたい事があります。」

幾つか、それは私が今までに彼からするとおかしな行動をしてきた理由に当たる部分だろう。

「…はい。」

「一つ目、何故あなたは17番道路がマンムーの力を借りて進む道だと分かっていながら通ろうとしたのですか?」

やはり、彼からすると最も不可解に感じる所なのだろう。

「…それは、私が寒さに…鈍感だからです。」

答えとしてはかなり不十分だ。だが、これ以上を語るには多くを語る必要がある。きっと彼は疑問を幾つか抱えたこの状況で、それは望まないだろうと解釈した上での不十分な返事だ。

「鈍感、ですか…まあ、良いでしょう。」

私の不十分な答えに案の定彼は不服そうな表情だ。

「二つ目です。あなたがご自分の髪を隠すのには、奇妙だからという理由以外にも理由があると言っていましたね?それは何ですか?」

「今は奇妙と言われるくらいですが、正体が知られた時にそれでは済まないから…という感じでしょうか。」

「…そうですか。詳しくは話す気はないという事ですね?」

もうここまで言っておきながら隠そうなんて思っていない。全ての理由の起因を説明するのは不十分ながらも彼の質問に全て答えてからでも遅くないだろう。

「ここまで言っていて尚のこと隠そうなんて思っていません。ただそれはあなたの質問に答えてからお話するつもりです。ズミさんが望むのであれば今すぐにでも…」

「いえ、分かりました。では三つ目、あなたはミアレでお姉さんから逃げていたのに、何故お姉さんがあなたのご自宅を訪れた際にはすんなりと会ったんですか?」

私とズミさんが話をしている中、ラウィネは私の後ろに隠れたまま出てこない。彼女はこう見えて人見知りなのだ。マーシュさんの時は振り袖を着る私を見て興奮していた、そしてマーシュさんがポケモンと話が出来たからだろう。

「ミアレで姉に見付かった時にはまだやるべき事がありました。姉が私の自宅に来た時にはそれは終えていた、それだけの事です」

「…分かりました。それでは、最後です。あなたは告白に対する私の返事を聞いてから、これで良いんです。と言いましたよね?あれは、どういう意味ですか?」

「あれは、…」

私が言葉に詰まった瞬間に周りが突然賑わい始める。ステージで行われているバトルが勝敗を決した様だ。彼は私に移動しましょう。と言った。

「その前に、着替えて来ても良いですか?」
私はそう言いズミさんの元を後にした。少しだけ、話す前に心の準備をしたかった。


・・・

「ラウィネ、ありがとう。あなたが居てくれたおかげで心強かった…」

私がそう言うと彼女は嬉しそうに私に寄り添う。私は彼女を撫で、ラウィネをモンスターボールの中に戻した。着替えを済ませ、マーシュさんに挨拶をする。彼女は、ユキメノコの振り袖セヴリーヌはんに着てもろて良かったわ。綺麗やった。と言ってくれた。私も彼女に一時の夢の様な時間をありがとうございました。と礼を述べその場を去る。


ズミさんを待たせている。あまり長く待たせては悪いと思う一方、全てを話す心構えは完璧とは言い難い。

「ズミさん、お待たせしました。」

「ええ…」

「…さっきの質問の答えですが」

私は深く息を吸う。今は私の顔に張り付いているはずの笑顔の仮面はない。

「…私、振られる事は何となく分かっていました。その上でないに等しい小さな奇跡を期待しながらあなたに好きだと伝えました…、でもあなたの私の気持ちに応えられないという答えを望んでいました。それは…伝える事で私が満たされたかったという我が儘です。」

夜のクノエシティの風が落葉を巻き上げる。落葉は瞬間的に空に舞い、私達の背後に落ちる。あの赤い落葉が地に着いたら、私は彼に言おうと心に決める。

「ズミさん、聞いてくれますか?」

 

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