類は友を呼ぶ


「…私にも友人が、今までにたった一人居ました。それも、私が失踪した事で連絡を取ることもなくなりましたが」

彼女はまた、友人についても話してくれた。彼女の事を良く知りながらも、仲良くしてくれた唯一の友人であったと。

「彼女、実はその地方のポケモンリーグのチャンピオンやってたり…でも私が失踪した後に彼女も姿を消したらしいんです」

「それは、また…なんと言うか類は友を呼ぶとか何とか…」

と私が言うと彼女の思う所は分かりませんが、そうかもしれませんね。とセヴリーヌは笑い、元気にしていると良いのですが、と付け加え数瞬目を伏せた。

「きっと、そのご友人も同じ事を思っていますよ」

「…ふふ、かもしれませんね。」

よく笑う表情は見せる人だと思っていたが、彼女はそれ以外の表情をその笑顔の裏に隠してしまう傾向がある、そう何となく感じた。実際の所隠し事をしながら生きていくにはそれが一番便利だという事だ。

「それはそうと、ズミさんはご友人は?」

「まあ、居ますよ…一応。」

「どんな方なのですか?もしお聞きしても良ければ、お聞かせ願えますか?」

私にもよく会う友人が二人居る。元はといえばレストランでのメニューを考えていた時に、彼らに意見を求めたのがきっかけだ。それからよく夕食を共にしたり、食事が関係しない所でも多くの時間を過ごす様になった。と、言うと彼女は素敵だと言った。

「そういった友人を持たない私には、とても眩しいです」

「明後日、彼らと夕食を食べる事になっていますが…あなたもどうですか?」

微笑みながらその様な関係は眩しいと言う彼女に何気なく提案してみる。予想通り彼女は私があなた方の楽しい時間にお邪魔するのは悪いと断ってきたが、私がセヴリーヌを彼らに紹介したいと言うと了承してくれた。

「…でも、本当に良いのですか?私は…」

「ええ、前にあなたの事を彼らに話した事がありまして、あなたの事が気になる様子でした。なので、是非」

「ズミさん一体何を言ったのですか…?」

「雪に埋まっていた人が居たという事でしたり、その人が念のためにミアレシティで迷子していた事ですね。主に。」

私がそう言うと彼女は改めて聞かされるのは恥ずかしいと言った。何故そんな所で照れて居るのですか。

「それと、もし可能であれば…ウィッグは無しで来て頂けませんか?」

「…約束にはありませんよね?」

「ええ、でも彼らは私の友人です。偽ったあなたより、本当の姿のあなたを紹介したい」

と私が言うと、ウィッグを被っているからといって偽っているつもりはないのですが。と彼女は困った顔をしている。

「…でも、ズミさんがそこまで仰るんです。分かりました。」

と渋々といった様子だがこれも了承してくれた。何故私は本当の姿の彼女を彼らに紹介する事に拘っているのでしょう、と我に返ると少し恥ずかしくなる。

「一つ、良いですか?」

「何でしょう?」

「私はあなたにヒャッコクシティまで送って頂いた際に、人と関わる事を避けている。と言いましたよね。なのに、何故です?」

彼女は私の目を見据えてその様に尋ねた。彼女の表情には困惑の色が映っている。

「特に理由等ありませんが、敢えて言うならば放っておけないからですかね。」

「一人で居ようとしている人間ですよ?放っておく方が簡単でしょう?」

そう言うセヴリーヌはとても寂しそうだと私は思った。きっと彼女にそう言えば、そんなことありません。と否定するのでしょうが。

「確かに。でもそれはあなたの本当の気持ちではない様に感じたので…」

「ふふ、本当の気持ちなんて私にすらハッキリと断定する事は難しいというのに、あなたには分かると仰るのですか…」

彼女は静かにそう言った。そこで引いてはならぬとつい口調を強める。

「何となくです、あなたは自分が望んでいない事ばかり口にして居ませんか?本当に望む事こそ言えていないのではないのかと思いました」

「…あなたにそう見えるのならば、そうなのかもしれませんね」

「ええ、なので私はあなたを招待したいと思いました。不快に思われたなら、すみません」

私が詫びると彼女は、不快には感じていません。ただあなたの様に私をそこまで見て解釈してくれる人を他に知らないだけなんです。とまた笑みを浮かべながら言ったのだった。

 

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