name change



こんがりキツネ色に焼き上がり、艶々とした輝きと芳醇な香りを放つアップルパイ。しっとりとした生地に爽やかな酸味を忍ばせたチーズケーキ。シュークリームは今にもカスタードとホイップのダブルクリームが飛び出そうなくらい、大きく膨らみ。一目見ただけでもその滑らかさとのどごしの良さを窺い知れる、黄金色のプリン。

学食のテーブル二台に所狭しと並べられた、まるで繊細なジュエリーと見紛いそうなほど美しいたくさんのお菓子たち。どれもこれも全て、我らがオカン、錫也が作ったものだ。

「錫也すごい!どれもとっても美味しそう!」
今日は土曜日だからか、学食には私たち以外には誰もいない。やたらと響いた私の歓声に、調理場で後片付けをしていた錫也が手を止め振り返った。

「ありがとう名前。…でもちょっと作り過ぎたかな」

そう言って錫也は肩をすくめる。私はテーブルに視線を戻し、

「うーん、確かに多いかも?羊くんでもいれば……って、そういえば月子ちゃんたちはどうしたの?朝から姿を見てないけど」

こっそりクッキーを一枚拝借(味見味見!)しながら尋ねる。バターのコクと甘さが絶妙なバランスだった。

「あぁ、月子たちなら街に行ったよ。羊に案内して来るって、哉太と三人で」
「錫也は行かなくて良かったの?」

もう一枚。うんやっぱりすごく美味しい。

「しばらくお菓子作ってなかったから作りたかったし、……何より名前とい「東月!」……ちっ」

突然錫也が舌打ちをしたので何かと思えば、珍しい取り合わせが学食に入って来るのが見えた。

「颯斗くん!龍之介くん!どうしたの、二人とも」
「こんにちは名前さん。先ほど宮地くんと音楽部の先生から紅茶をたくさんいただきまして。せっかくですから大勢の方とご一緒したいなと校内をさまよっていたところなんです」
「そういうことだ。実家から唐突に送られてきたのだが、あまりにも量が多くてな。青空におすそ分けしたんだ」

ドン、と調理場のカウンターに異なるデザインの茶葉の缶が複数個(それも二個や三個どころではない)置かれる。見たところ、どれもアッサムかダージリンだった。

「よろしければどうですか?ちょうどお菓子もあるようですし」
「おお!二人ともナイスタイミング!…錫也、良い?」
「もちろん。こういうのはみんなで楽しまないとな」
「やったね!じゃあ私がお茶を用意するから、颯斗くんと龍之介くんは座って待ってて」

山のような缶の中から一つを選び、二人に声を掛ける。

「ありがたく使わせてもらうね!」
「……あ、ああ。遠慮なく使ってくれ、名前」

どうやら私が選んだのは龍之介くんの方の茶葉だったらしい。照れたようなはにかむような笑顔が返ってきた。…その横で颯斗くんが焦った表情をしたのは、きっと気のせいだろう。うん。

4人分のティーカップを台に並べ、コンロへ行って、ティーポットに沸かしたお湯を入れて戻る。頃合いを見計らって紅茶を注ぎ…横からひょいとそれらを持っていかれた。

「……名前、手伝う」
「あ、ありがとー。……って、四季くん!」

錫也にしては喋り方が変だなぁと顔を上げるとそこには、琥珀色の温かい飲み物が注がれた5人分のティーカップを載せたトレイを持つ、四季くんの姿。突然の登場にびっくりするとともに、自分の分のカップを用意する手際の良さに思わず笑みがこぼれる。

「たくさんの紅茶とお菓子が視えた」
「そっかそっか。じゃ、四季くんも一緒にお茶しようか」
「ありがとう名前」
「ふふ、私は紅茶を淹れただけだよ。お礼なら他のみんなに、ね?」

四季くんの後ろについてティーポットを運ぶ。香り高いダージリンを胸いっぱいに吸い込みながら。

「みんなー、お待ちかねの紅茶でーす!」


さあ、ティーパーティーを始めましょうか!




(わあ、アップルパイも美味しい!)(む。神楽坂、それは俺が)(早い者勝ちだ)(まあまあ、たくさんあるから)(…美味い)(紅茶も格別ですね。…若干納得いきませんが)(どしたの颯斗くん。眉間に皺よってるよ?)(すみません、せっかくのティータイムに。…楽しいですか、名前さん?)(うん、とっても!)(それは良かった。では、僕の隣りに来ませんか?)(((青空!抜け駆けは見逃せないな)))(何の話?)(そのうち分かるさ)



その後、私の両隣りの席をみんなが取り合うことになったというのは、また別のお話。



((((名前の隣りは俺だ(僕です)!!))))























あとがき
8400hit、まゆ様よりリクエストをいただきました。
長らくお待たせしてしまって申し訳ありません(^-^;)

逆ハー(むしろギャグハー?)にしてみたところ、宮地からの名前呼びが一度だけ…だと…

お菓子の描写を頑張りました(そこかよ)
少しでも美味しそうに感じていただけたら幸いです(`・ω・´)←

いかがでしょうか。苦情や書き直し要請はいつでも承りますので、遠慮なくお申し付けください。

それでは、まゆ様。
リクエストありがとうございました!


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