※ツナツナ兄弟パラレル
逃げよう、何処までも

始まりは、他愛もない話からだった。
「ツナって何か欲しい物とかある?」
「欲しい物? いっぱいあるよ。ゲームとか漫画とか、お小遣いとか。あとは綱吉がいればいいよ。綱吉は?」
「オレもツナがいてくれればそれで構わない」
綱吉が優しく笑んで額にキスを落とせばツナも嬉しそうに笑う。すぐ近くで微笑み合って、今度は唇にキスをする。ぬる、と入って来た生暖かい舌をツナは甘んじて受け入れた。瞳を快楽の色に染めて、お互い夢中で貪る。
唇が離れるとツナは満足げな、甘い溜息を零した。だがツナが口にしたのはとてもキスをした後とは思えないような話題だった。
「綱吉。オレね、父さん達が話してるのを聞いたんだ。オレ達は異常だ、このままじゃダメだから引き離そうって。オレ達、おかしいの?」
ツナが縋るような目で綱吉を見つめる。ツナが語る言葉に綱吉は目を見開いた。まさか両親がそんな話をしていたとは。
確かに、自分達は互いへの執着が異常なのも自覚していたし、その事を両親が気にしているのも知っていた。いつだって出掛けるのも、遊ぶのも、寝るのも、風呂に入るのすらも2人一緒だった。それを世間一般的に見れば「おかしい」のも分かっていたが、綱吉にはツナしかいなかったし周りの目などどうでも良かった。幼い頃からお互いが世界の全てだった。
綱吉の沈黙にツナが不安そうに顔を歪めた。
「綱吉?」
「ああ、ごめん、ツナ。……オレ達はおかしいよ。兄弟なのに恋人同士のキスをする程好きなのはおかしいんだって」
ツナは動揺を隠せなかった。何だか綱吉に自分の世界観を否定された気分で悲しくなった。すぐにツナの動揺を感じ取った綱吉が、ツナを強く抱き締める。
「ツナ、ツナ。確かにオレ達は異常だけどオレだってツナの事愛してる」
優しく名前を呼んで、オレにはツナしかいないんだ、と耳元で優しく囁いてやるとツナはびく、と体を震わせて、しかし嬉しそうにはにかんでオレもだよ、と返す。ツナの頬は紅葉を散らしたように赤くなっていた。
「ねぇ、綱吉。オレ達どうしたらいいの? このまま引き離されるのは嫌だよ」
「オレだって嫌だ。………ツナ。オレ達、逃げようか」
このまま引き離されるなんて耐えられない。ならば今の自分達には「逃げる」という手立てしか無い。

――そろそろツナも普通の友達が欲しいなんて言い出すかも知れない頃だ。

ならば丁度いい。2人で何処か遠くへ行ってしまおう。綱吉は困惑するツナに畳み掛けるように訊ねた。
「嫌?」
「ううん! ……いいよ、綱吉。逃げよう」
ツナは大きく首を振って、綱吉の手をぎゅっと握った。泣くのを堪える顔をしている。恐らく両親の事を考えているのだろう。綱吉よりもツナの方が両親を愛していたから。
しかし逃げると決めた以上、両親の事を気にしている場合ではない。何せその両親が自分達を引き離そうとしているのだから。
「父さんと母さんには置き手紙を書いて行こう。お小遣いはあるだけ全部持って、必要最低限の荷物はリュックか何かに詰めて。大丈夫、オレがいるから」
「うん……分かった」
ツナは泣き出すのをぐっと堪えて綱吉の言うとおりに自分のリュックを探しに行った。綱吉も準備を始める。
必要な物も思い出も、全てこの部屋にある。小学生の時に割り当てられてからずっと2人で過ごして来た。初めてツナにキスをしたのも此処だった。何度も何度もキスをして、深いキスのし方も覚えて、何度か抱いてしまおうかとも思った。
「綱吉、いつ出発するの?」
「夜中、父さんと母さんが寝てる間に。あ、携帯は置いて行けよ?」
両親から持たされている携帯には大切な写真も入っていたが、足が付くので持って行く事は出来ない。ツナは何故持って行ってはいけないのか分からないらしく、首を傾げた。
「どうして? 綱吉と撮った写真とかいっぱい入ってるのに……」
「GPS……って言っても分からないよな。携帯を持ってると、オレ達が今何処にいるかが分かるんだよ。いつも一緒にいるんだから、写真は我慢しろ、ツナ」
綱吉の説明を聞いたツナは寂しそうに携帯に保存してある写真を眺めた。暫くして携帯を閉じ、机の上に置いた。決意したらしい。それからツナの机に飾ってあった家族写真に目を留め、胸の前に掲げて綱吉に向き直った。
「じゃあさ、この写真は持って行ってもいい?」
綱吉は驚いたが、すぐに頷いた。
「いいよ。ツナ、いつも寝る時間までには荷物を纏めておいてね」
「分かった! でも、もうすぐ終わるよ」
思ったよりツナが従順で嬉しかった。もっと両親に執着するかも知れないと思っていたが、杞憂のようだった。
自分達を産み、ここまで育ててくれた優しい両親には感謝しているし、罪悪感もある。少し寂しい気持ちだってある。それでも綱吉はツナを選んだし、ツナも綱吉を選んだ。
「大好き。愛してるよ、ツナ。オレから離れて行ったりしないで」
ツナに聞こえないように小声で、強い願いを込めて呟いた。
「逃げよう」
その時、1階から母がおやつの時間を告げた。ツナが明るく返事をして「行こ、綱吉」と満面の笑顔で手を差し出した。綱吉は何も言わずにその手を取る。指を絡めてぎゅ、と強くその手を握った。

出発は深夜。

オレ達はずっと一緒。

誰にも邪魔はさせない。

離れたりしない。

さあ、強く手を握って。

その手と手を繋いで走り出したら――


逃げよう、何処までも




ツナツナに脳内ジャックされた勢いで、双子の兄弟パロです。
そしてツナツナ初挑戦。
互いへの執着心・依存心が強くて離れられないツナと綱吉。
この後本当に家出します。
続きはご想像にお任せです!
でも実を言うと私の中では最終的に捕まって引き離されるバッドエンド。←



10.9.23

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